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ア一サ一・D・リトル・ジャパン株式会社 京都大学工学研究科 材料化学専攻 無機構造化学分野 出身

2014/11/04 掲載

研究者の楽しみと限界の両方を知っている自分だからこそできる、技術と経営の橋渡し。

大学院時代の研究内容を教えてください

研究室 大学院では材料化学専攻所属の無機化学を扱う研究室に所属していました。
私の研究テーマは、金属ナノ粒子の集積制御。シリコン基板表面に不安定な状態を創りだし特殊な溶液に浸漬すると当該箇所にのみ金ナノ粒子が析出する現象を応用し、金粒子のパターニングおよび得られた構造を高感度センシング技術に応用する研究を行っていました。この研究は、そもそも全く別の目的でナノ粒子の合成研究を進めていた際に、たまたまシリコン基板上に不自然に直線的に金ナノ粒子が配列する現象が発見されたことに端を発します。当時の私は、「これをうまく制御できれば金属ナノパターニングに応用できるのでは」と直感的にひらめき、当初の研究テーマからの方向転換を申し出ました。とは言え、研究室の誰もその現象や背景にある理論に関する知識を持ち合わせておらず、全て自分一人で手探りで進めていくしかありませんでした。そのせいで、一つの研究としての体を成すまでには随分な時間を要し、博士課程の後半に入るまで「本当にこのテーマで博士論文を書けるのか」と常に不安に感じておりました(笑)。そんな綱渡りの研究テーマでしたが、様々な方の協力を得て、最終的には何とか博士号取得までこぎつけることができました。

当研究に学術的・産業的に大きな価値があったとは言えないかもしれませんが、与えられた研究テーマを遂行したのではなく、自ら発見した現象を自分なりに追究し、曲がりなりにも研究室の一つの研究テーマにまで昇華したという点は誇れる部分だと思っています。また、たった5年という研究生活でしたが、その成果を新聞でも取り上げていただくことができましたし、時に「自分しか知らない宝箱を開けるような」と表現される"研究の醍醐味"を存分に味わえたという意味で、自分の人生の中核を成す非常に有益な5年間であったと思います。

就職活動はどのようにされたかお教えください

就職活動は、博士課程2年生の夏から開始しました。理由は後述致しますが、丁度この時期に研究者として生きていくことの限界を知り、自らのキャリアを考え直すこととなったからです。自分は今後どのような道を歩めば良いのだろうかと悶々と考えた後に、「悩むくらいなら一度外の世界を見てみよう」と思い至り、各企業が主催しているサマーインターンシップに応募しました。当時、周囲の方から「日系企業は博士課程出身者なんて取らない」と脅されていたので(笑)、外資系企業に対象を絞り片っ端から応募。合計5社のインターンに参加することができました。そこで、出会ったのが現在の勤務先であるADL。主に製造業のお客様に対して経営コンサルティングを行っている会社です。参加するまでは当社が「技術と経営の橋渡し」を行っている会社ということも知らずに参加しましたが、説明を聞いて「まさに自分がやるべき仕事だ!」と思いました。また、他のコンサルティングファームと異なり、社員達が議論に対し非常に真摯な姿勢を持っていることにも惹かれました。たとえ相手が学生であっても、良い意見が出れば賞賛し、一緒に悩み、最終的に「本当にクライアントのためになる結論」へ到達しようとする。そのような真摯な姿勢を持つADLの社員と、是非一緒に働いてみたいと思いました。

秋以降の本選考では主にサマーインターンに参加した企業の中で、自分にとって魅力的だと思えた企業にエントリーしました。並行して、メーカーに勤める研究者の方にお話を聞かせていただいたり、友人のベンチャー立ち上げをお手伝いさせてもらいながら、その他の選択肢についても十分吟味を行いました。このようにひと通り吟味を行ったことは、自分の中で「コンサルティングファームで働くこと」への納得度が高められたという意味で非常に良かったと思っています。とは言え、自分のけじめとして博士号は取得しておきたかったため、当社から無事内定をもらった後には就職活動を実質終了し、研究に専念しました。

現在はどのような業務を行っていますか?

弊社のコンサルティング業務は主にプロジェクトの統括を担うミドル・シニア層と、各サブパートの統括および情報収集や分析を担うジュニア層で構成されており、私は現在ジュニア層として主に情報収集・分析および資料作成業務を行っています。情報収集・分析というと、「一日中データベースやエクセルを相手に無味乾燥な作業を行っているのでは」「何だかつまらなさそうな仕事だ」と思われる方も多いかもしれません。実際、私も就職前までは「情報収集・分析というのは誰でもできる作業だろう」と考えていました。理系の皆さんであればご存知の通り、サイエンスの世界では絶対的な「真理」を検証する術として分析があり、その手法は数多くの科学者の試行錯誤を経て学術的に確立されたものであるため、目的さえ決まれば分析作業で迷いが生じることは稀かと思います。ところが、コンサルティングファームでの情報収集・分析は、絶対的な真理を追求するために存在しているわけではなく、常に「お客さんの悩みに答えるため」の作業として存在しています。そこには決まった方法や定石は存在せず、「どのような情報を集めれば良いか」「それをどのような形で見せれば良いか」といった点は、お客さんによって、またプロジェクトの立て付けによって毎回異なるものなのです。我々は常に、決められた時間の中でどうすればお客さんの悩みに答えられるかという部分に頭を悩ませ、迷いながら作業を進めます。そこが、サイエンスの世界の「情報収集・分析」と大きく異なる点であり、またこの仕事ならではのやりがいが感じられる点でもあります。

こういった日々の作業に加え、定期的にお客さんへの報告会が行われます。このような場において、ジュニア層にどの程度裁量を与えるかはファームによって異なりますが、弊社では分析を行った担当者が責任を持ってお客さんへのプレゼンテーションまでを担うケースが多いです。すなわち、ジュニアであっても、大企業の部長や社長を納得させられるようなプレゼンテーションを行うことまでが期待されています。コンサルティングファームが、時にクライアント企業に大きな方向転換を問うこともあるということを勘案すると、これは大変なプレッシャーであることを理解いただけるかと思います。常に「自分だったらその提言を実行したいと思えるか」と自分自身やチームに問いながら、最終的な提言に向けてまとめあげを行っていきます。

業務のやりがいや、大変なことをお教えください

業務風景 前項の通り、コンサルティングファームでの仕事、特に弊社での仕事は一つの企業の命運を分けるほどの大きな責任を伴う仕事です。多くの報われない研究者・技術者にとって少しでも力になれればと思って選んだ仕事ですが、そういった方々の運命を決める提言を行わなくてはならないことも多く、その重圧から逃げ出したくなる時も多々あります。しかし一方で、苦労して提言を行った後に、関わった研究者・技術者の方々から感謝のお言葉をいただいた時には大きな喜びを感じることができ、「この仕事を選んで良かった」と心から思います。

自身の経験の中では特に、入社一年目の秋に参画した、とある日本メーカーの事業性評価プロジェクトが印象に残っています。一般的に事業性評価を始めとする企業価値の査定という行為は、財務諸表や特許数、経営戦略などわかりやすい指標によって評価されます。製造業の価値評価と言えど、本当に細部の技術まで入り込んで査定を行うケースは稀だと思います。しかし、当プロジェクトにおいて我々は、「対象会社の価値を正当に評価するためには、その会社が有する技術を理解するために現場で働く技術者の方から直接お話を聞く必要がある」と考え、現場技術者の方からじっくりとお話を伺う機会を設けていただきました。そもそも査定という行為自体が、査定される側からすれば気持ちのいいものではないはずですし、現場の方には「どうせ説明してもわからないだろう」という思いもあったのだろうと思います。しかし、それだけに、正しく理解するための準備や姿勢が非常に重要であると我々は考えていました。そのような我々の思いが伝わったのか、3時間に渡るインタビューの最後に、対象会社の事業部長さんから「こんなにちゃんと聞いてくださってありがとうございます。社内でもこんなに聞いてもらえません」と感謝のお言葉をいただくことができました。技術者が大切にしている個々の技術を正しく評価し、ビジネスに繋げていくこと。時には少し過大評価をして、自分が良いと思った技術の可能性にかけることで技術の進歩をサポートすること。それが自分の役割であり、この仕事を続けていく理由なのだということを再認識できた瞬間でした。

大学院生へのメッセージをお願いします

学生時代 自分が心の底から楽しめる仕事を見つけるためにも、「常にチャレンジすること」を心がけていただければと思います。
大学院生の間は言わば、モラトリアム。いろんなチャレンジが許される今の時期にこそ、精一杯チャレンジし、自分の限界を知って下さい。自分が本当に打ち込むべきこと、本当に楽しめることは、そういったチャレンジの向こうに見つかるものだと私は思っています。

私は現在幸運にも、心から「楽しい」と思える仕事に就くことができていますが、ここに来るまでには紆余曲折がありました。修士一回生の時に、与えられた研究テーマとは別の部分で偶然面白い発見をし、新聞に取り上げられたことをきっかけに研究の面白さに開眼。iPhoneのような、社会の在り方そのものを変えてしまうような楽しいものを世の中に送り出す研究者になりたいと考え、博士課程への進学を決意しました。博士課程進学後は、デンマーク工科大学の教授の講義に感銘を受け、自ら助成金を獲得して短期留学も実現。しかし、そんな風にどっぷりと研究の世界に入ってみて、身に染みて感じたことは、「研究者や技術者が追究していることは、必ずしも社会の幸せや楽しさに繋がっていない」ということでした。特に日本においては、社会の仕組みに対する感度や経営力が欠けているため、せっかく良い技術を生んでも、それが社会における価値に繋がらないことが多く、研究者として貢献できることの限界を知りました。自分は今後どのような道を歩めば良いのだろうかと悶々と考える日々が続きましたが、一度外の世界を見てみるしかないと思い至り、博士課程2年の夏に外資系企業のインターンにチャレンジしてみることにしました。当社含めた数社のインターンに参加させていただく中で、当社が日本の製造業において技術と経営の橋渡しをするプロジェクトを多数手がけていることを知り、これこそが自らの目指す道だと確信。博士課程から一転、ADLでキャリアをスタートさせる道を選び今に至ります。

業務風景 そういった紆余曲折を振り返って思うのは、「いろんなことにチャレンジしたから今がある」ということです。
もしも偶然見つけた面白い現象をとことん掘り下げてみようと思わなければ、もしも博士課程に進学しなければ、もしもデンマーク留学を決意しなければ、もしも当社のインターンに参加しなければ、今の仕事に就くことはありませんでした。それぞれのチャレンジで失敗や痛い思いも沢山しましたが、全てが今の自分にプラスに働いていると断言できます。
これから就職活動をされる大学院生の皆さんには、自分が心から納得して楽しめる仕事に巡り合うためにも、ぜひ失敗を恐れず、「ダメだったらまた考えればいい」という構えで様々なことにチャレンジしてみていただければと思います。
大学院生は修士の必要単位取得と研究、そして就職活動をそれぞれこなさなければいけません。特に最初のパートでも触れましたが、院生になると面接の時に自分の研究内容について深く聞かれます。研究進捗が良くない方は今のうちに研究を進めておくことをお勧めします。
大抵の方は自分の研究で得た知識を実際の業務で活かす、ということはないか、もしくは非常に稀だと思います。しかし、研究を進める中で身につく「わからないことの答えを探るノウハウ」というのは、情報の少ない、新しい技術を扱うことの多い仕事においてはとても役に立ちます。それに、社会人になって年単位の時間をかけて1つのテーマを研究するということは研究者にならない限りは経験できない、貴重な体験だと思います。
就職活動については、私の反省を挙げると、自分のやりたい仕事は何か、ということをまず決めるということです。そのために希望する業界以外の業種の説明会を受けるのも、比較対象を作るという点で良いと思います。自分はどんなことが好きだから、どういうことがしたい。という結びつけが出来れば、希望する企業も絞れますし、自ずと志望動機も決まってくるかと思います。

残り少ない学生生活だとは思いますが、悔いを残さないように過ごしましょう!


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