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The 16th IEEE TOWERS
「アカリク賞」受賞者インタビュー

猪崎 遼大 さん
猪崎 遼大 さん

筑波大学
システム情報工学研究科
知能機能システム専攻
音響システム研究室 M2
「カメラを用いた擦弦楽器における演奏技術の可視化」

【選評】
演奏のデータ化というチャレンジングな研究であることに加えて、この研究によって暗黙知が可視化されることで感覚だけに頼らない再現性のある演奏の学習が可能となるとのことでした。また、演奏文化を後々まで継承できるようになると期待されることから、弊社ミッションの「知恵の流通の最適化」に適う研究であると評価いたしました。

発表内容

今回 The 16th IEEE TOWERS でご発表いただいた研究内容について教えてください。

Experimental configuration
出典: Izaki, R., Naoto Wakatsuki, Koichi Mizutani & Keiichi Zempo (2019) “Non-contact measurement of bow force and friction force in bowed string instruments using a camera”. Proceedings of ISMA 2019. Pp. 124–129.
http://pub.dega-akustik.de/ISMA2019/data/articles/000079.pdf (最終アクセス:2019/12/11 17:15)

猪崎さん: 私の研究は「擦弦楽器の演奏を可視化すること」です。具体的には楽器に対するパラメーターと、それに対して返ってくるフィードバック、振動のデータをとるものです。演奏時に得られたフィードバックを使ってその後の演奏をどう調整するかが重要で、その体験の蓄積によって「技術」が生まれます。技術は人が練習をして、色々な人に教わったりして身に着けるものですが、それを可視化するためには入力とフィードバックを同時に測定しないといけません。そして「記録手法」という観点から簡略であることが求められ、なおかつ演奏に影響を与えてはいけないという制約があるのです。この研究はそれらの課題を重点的に考えています。

この研究ではカメラを用いていますが、他にも方法はあるのでしょうか。

猪崎さん: センサーを用いることも可能なのですが、1つのパラメーターに対して1つのセンサーが必要になります。もし4本の弦を計測する場合には4つ必要となり、どうしても演奏に影響を与えてしまいます。カメラはその意味で優れていて、1度に複数のパラメーターを取ることができますし、演奏への影響を抑えることができます。

この研究に至る経緯

今の研究室を選んだ経緯を教えてもらえますか。

猪崎さん: 私はそもそも音楽が好きで、理系よりも芸術系に興味がありました。東京理科大学では物理の専攻でしたが、音の研究室に行きたいと思っていました。でも残念ながら相当する研究室がなかったので、楽器の研究をしようと思って、個人的にピアノのチューニングを研究し始めたんです。ピアノのチューニング方法には「エントロピー・チューニング」というものがあるので、このテーマは物理学にも一応通じていました。

「演奏技術の可視化」の研究を志した発端を聞かせてください。

猪崎さん

猪崎さん: もともと私は自動演奏に興味がありました。自動演奏にはパラメーターが必要で、より多くのパラメーターを多く持つ楽器は弦楽器だろうということで、管楽器を研究対象にしたのです。また、私が演奏できる楽器はギターだけなのですが、同じ研究室の若槻先生から「自分が弾ける楽器には先入観が入るので、せっかくなら違う楽器で研究してみたら?」と提案されたこともきっかけとなりました。弦楽器に関しては奏法すら分からず、一度に何本の弦を弾くのかも分からない状態でした。演奏の仕方について調べるのは、かなり厳しかったですね。

弦楽器についての知識はどのように深めたのですか?

猪崎さん: 基本的には演奏者に聞くのがいいのですが、あまり出会えないので、教本や『楽器の物理学』という分厚い本を読んだりして調べました。

研究の展望

この研究はこの先どんな方向に進むのでしょうか?

猪崎さん: メインの軸としてはパラメーターの検証です。パラメーター自体が弓の摩擦を含むので、それ以外にどのパラメーターをとる必要があるのかを検証して計測します。そして、いかに演奏技術を可視化するかを研究していきます。リアルタイムでパラメーターを見せて、本当に練習や技術の向上につながるのか、その辺りの研究を進める予定です。最終的には自動演奏やロボットによる演奏に手を出せたらと思っています。

例えば「ジョン・レノンの演奏をいまこのときに自動演奏楽器によって本物の演奏として聴ける」、そんなことを目指しています。また「記録手法」として発展したらいいなとも思っています。今の世の中、スピーカーを使って音を出すものが多いですが、将来的にそれらを生の楽器で出来たらいいなと。

自動演奏ができて、かつ通信がしっかりできたら、ある場所で演奏しているものをまったく離れたところでまったく同じようにロボットを用いて聴くことも可能です。すると世界同時コンサートも夢じゃないですね。

猪崎さん

確かに医療分野では遠隔手術するロボットも出てきていますね。

猪崎さん: いまは「モノ」から「コト」へと価値が変わり、「体験」が求められる時代ですよね。エンターテイメントに類するものは社会に絶対必要なので、私の研究は社会に貢献できると思っています。今後は「音声」だけでなく「演奏」も後世に残せたらいいですね。将来的にはどこかの楽団とコラボなどもありえるかもしれません。

将来、研究テーマにしばられず、博士課程終えた後に、こういう自分になっていたいとか、仕事とかイメージとか夢などありますか?

この道で就職するなら楽器メーカーかなとは考えています。大学院に進学する時、理学から工学に変えたように、今後も状況に応じて変わるかもしれません。

メッセージ

最後に大学院生や後輩にメッセージをお願いします。

猪崎さん: 自分のやりたいことが出来る環境に飛び込めるように、色々な分野の基礎を身につけておくといいと思います。例えば、私は物理学出身なので信号処理の知識がなくて苦しんだりしていますが、学部で学んだ問題へ理論的なアプローチは役立っています。将来を見据えて複数の領域で基礎を身につけていたら、さらに出来ることが広がっていたなとも思います。後から方向性が定まった時にもスムースに取り組めるようになるので、基礎を固めることを大切にして欲しいと伝えたいです。

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