オンライン授業はなにをもたらしたか #ポスドク総研

ポスドク総研
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コロナ禍に翻弄されながら、各大学は4回目の新学期を迎えました。2年前までは「日本中の大学授業がほとんどオンラインで行われるようになる」とはとても想像できなかったのですが、今となってはすっかり日常の風景になりましたね。

経験も設備も時間も足りないまま、担当教員と学生共に手探りで進め、つまずきながらもなんとか実現させたオンライン授業、その効果は一体どれほどのものでしょうか?

今年に開催された関連分野の学会では、オンライン授業にまつわる諸問題についての検討が多く報告されました。以下ではその中の数例を紹介します。

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オンライン学習は成績にどのような変化を与えたか?

オンライン授業に対する最大の懸念事項は、おそらく「学生が十分に知識を獲得できるか」どうかでしょう。この点は、授業成績の比較を通してある程度検討することが可能です。

筆者自身も協力した研究(内海, 2021)では、中部地方の某国立大学の大学生約2000名を対象に、2020年度(全年度を通してオンライン授業)と2019年度(通常授業)を比較した調査を行いました。

その結果、2019年度とくらべて2020年度の方が、全体的に成績が上昇していることがわかりました。特には「S/A/B/C/F」の5段階評価においてのA評価の割合が増加し、B〜F評価の割合がやや減少するという傾向が見られました。

しかし、成績の向上はzoomなどを使ってリアルタイムに授業が行われる「双方向形式」には見られますが、オンデマンド形式などの「一方向形式」では見られない事がわかりました。つまり、双方向形式でやりとりを行うオンライン授業環境の方が、特に成績中間層〜下層にいる学生にとって、より知識を吸収しやすくなっていることが示唆されていました。

学生の認識はどうか?

客観的にみて、オンライン授業では成績がむしろよくなっていることが分かりました。しかし、学生自身はそう感じているのでしょうか?

上記の研究ではいくつかの項目を通して、「自分は授業全体を通してよく学んだと思うか」について、学生の主観認識を問いました。その結果は授業形式に大きく影響されることがわかりました。

双方向なやりとりができる授業形式では、学生はよりよく学べたと感じていますが、逆に一方向形式のオンライン授業になると、逆によく学べたと感じにくいことがわかりました。

授業満足度を追跡調査した研究(鈴木, 2021)では、2018年度〜2020年度それぞれにおいて130名前後の大学生を対象に、前期の授業への評価をたずねました。その結果、コロナ禍の中にある2020年度の方は、比較的に授業満足度は低くなりましたが、「もっといろいろなことを勉強したい」といった学業親和性の得点は高くなる結果がわかりました。

学生の「生の声」に注目した研究もあります。松島・尾崎(2021)と尾崎・松島(2021)はオンライン授業観を問う自由記述問題を解析しました。

ポジティブな意見として「自分のペースで学習できる」「何度でも復習できる」などの意見が学年を問わず多くみられました。

ネガティブな意見は、「集中しにくい」など、自己管理の難しさに関する共通項の他に、学年によって違う回答傾向も見られましたた。1年生は「質問しにくい」「きちんと理解できているかが不安」などの授業の進め方への言及が多く、上級生は「課題の多さ」への言及が多かったようです。おそらく前者は経験の不足から生じる不安、後者は過去の授業経験との不一致からくる不満に由来するものではないかと推測します。

メンタルヘルスとの関連性

こうした不安や不満はオンライン授業に限られた問題ではなく、その背景にはコロナ禍の全体的な影響があると考えた方がいいでしょう。コロナ禍の中で長期にわたる自粛生活、周囲との交流の減少、経済的状況の変化など、さまざま要因がストレス源としてあります。

冒頭で紹介した内海(2021)では、ストレスを高く感じている学生は、たとえ「双方向授業」のような全体的にみて効果がよかった授業形式に対しても、客観的成績と主観認識の間の乖離は大きいと報告されました。

逆にオンライン学習の時間は学生の抑うつレベルに悪い影響を及ぼすことも報告されています(松本,2021)。ただし、参加者個人のセルフコントロールが高いとき、オンライン学習時間による抑うつの影響は少ないことも報告されていますので、セルフコントロールを高めることによって悪影響が回避される可能性も示唆されました。

まとめ:これからのオンライン授業への提言

以上のように、オンライン授業の効果や学生からの反応に関する報告を総合的に考えると、授業の効果に関しては、事前に心配されていたほどネガティブなものばかりではないようです。効果的なオンライン授業を実施するためには、授業形式、課題の負担、対象の学年、メンタルヘルス状況などといった、さまざまな要因による影響を考慮する必要があることがわかりました。

たとえば、概して双方向でインタラクションできるような授業形式は、オンデマンドのような一方向の形式より、良い効果をもたらしやすいように思います。しかし、双方向でインタラクションするのは、数百人レベルの大きな授業では実施しにくいと思います。その場合、教員側には工夫が求められます。

例えば、リアルタイムに質問・回答しにくい場合は、授業後に学生が積極的に質問をできる環境を整え、そのフィードバックを公開する形で、他の学生もそれから知識を得ることができるようにするのが、一つの方法だと思います。筆者自身がおこなったオンデマンド授業では、前回寄せられた質問すべてに対して1問ずつ回答していく時間を、授業の冒頭に行うようになりました。時間が取られてしまうという問題はありますが、学生から寄せられた感想には「他の人の質問をみて自分も勉強になった」などといった良い評価も見られています。

また、教員側はオンライン授業の効果を保証するために、ついつい課題を多めに出してしまう傾向があるようです。しかし全ての授業でそれが行われると、学生にとって大きな負担となり、逆に学習の意欲や効果を損なわせる可能性があります。この点は、大学の中で課題量や授業の負担についてある程度の合意や協調が必要になるかもしれません。

また、学生の経済的負担や心理的ストレスへの適切なフォローや相談窓口の設立も重要と言えます。

他には一年生を対象とした授業や初めて触れる内容の授業に関しては、学習・課題の進め方について、対面授業以上に丁寧な説明と指導を行う必要もあるかもしれません。特に一年生にとっては、まだ同級生の間でネットワークを形成するチャンスも少なく、気軽に質問する相手も少ないので、このことによってもたらす学習への阻害や、心理的ストレスに対して、配慮をする必要があると思います。

コロナ禍の影響で「仕方なく」始めたオンライン授業ではありますが、うまく長所を発揮し、短所を回避することができれば、教育のあり方にとって大きなプラスになる可能性もあります。ぜひ一緒に「新しい教育のあり方」を作る意気込みで、コロナ禍がもたらす問題を乗り越えていければと思います。

参考文献

内海(2021) 大規模オンライン高等教育への移行と教育効果-名古屋大学を事例とした教員の成績付与と学生の自己認識の差に関する分析-. 日本比較教育学会第57回大会

鈴木(2021) オンライン授業の導入による授業満足度への影響 -2018~2020年における半期授業全体に対する調査の年度比較. 日本教育心理学会第63回総会

松本(2021)コロナ禍におけるオンライン授業の学習時間が抑うつに及ぼす影響ーセルフコントロールを調整変数としてー. 日本心理学会第85回大会

松島・尾崎(2021)大学生のオンライン授業観について(1) -オンラインに対するポジティブな意識-

尾崎・松島(2021)大学生のオンライン授業観について(2) -オンラインに対するネイティブな意識-

 

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[文責・LY / 博士(文学)]

 

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