海外でポスドクすることを選択肢に入れる #ポスドク総研

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博士を取ったらどこに就職しよう。どこで若手研究者としての経験を積もう。そんな問いは研究者の道を選んだ瞬間から、誰でも頭をよぎるものでしょう。その答えの中に、一瞬でも「海外」が選択肢に上がることは、珍しいことではありません。特に近年では、大学院生の段階からインターネットを用いて海外の研究者と直接交流する機会も多くなりました。そのため、日本を飛び出ることに対する心理的ハードルも下がってきているのでしょう。

とはいえ、わざわざ慣れ親しんだ環境から飛び出して、言葉も文化も違うところに行くのは、簡単なことではありません。このシリーズは筆者の海外ポスドクの経験をベースに、これから海外でポスドクに就くことを考える方のための参考材料を提供するためのものです。

初回では「海外に行くかどうか」を悩む段階に考えることについて、あれこれお話しします。なお、以下の話は主に欧米諸国の状況を想定しています。あらかじめご承知おきください。

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なぜ海外なのか?

海外に行こうと考える人にはいくつかのパターンがあります。「あの先生/あのラボに行きたい」と最初から狙い撃ちする人もいるでしょう。「自分の分野ではアメリカが進んでいるから、アメリカで研究したい」という人もいます。一方、「日本を出てみたい」と、少し漠然とした目標を持ちながら海外という選択肢を考える人も、少なくありません。いずれにしても、海外に行くことに何らかのメリットがなければ、わざわざ行かないですよね。

海外でポスドクをすることには、どんなメリットがあるか?

研究にとっての刺激

海外まで飛び出してポスドクをする最大の理由は、研究活動における刺激です。論文などの成果物からでしか知り得なかった研究が、ゼロから生み出されるプロセスを間近で見たり、その研究に参加したりするのは、特に駆け出しの若手にとっては大変良い糧になります。特に出身ラボや出身国の「常識」とは違うものを経験できることは、その後の自分の研究スタイルの形成にとっても重要な経験になります。

また、研究者同士が日常的に行う議論が濃密です。博士課程の学生も含め、各々が積極的に意見を述べ、ロジカルに議論し、意見をぶつけ合うことは珍しくありません。だからと言って攻撃的になる人はほとんどおらず、お互いを尊重した議論ができています。そういった環境の中では、たくさんのアイディアが生まれることも頷けるでしょう。

さらに、論文の生産性がとても高い研究者が多いように見えます。英語の運用能力が元々高いのもありますが、いい意味で「余計なことを考えずに」研究をアウトプットする能力や、アカデミック・ライティングのスキルも重要な役割を果たしています。そのような環境に身を置くことによって、周囲から学んだり、良い刺激を受けたりすることができます。

広がる「その後」

次の理由は、海外でのポスドクの経歴が将来への礎になることです。ポスドク期間はその後の就職にとって重要な準備段階です。どの国での就職でも、多様な文化や研究環境で研究する経験は評価につながります。日本では海外経験を求めるポストも増えてきました。海外で就職するためには、ポスドク期間で築かれる人脈はもちろん、海外での研究の進め方や大学組織・ファンディングなどについての知識もその後の進路を決めるための参考になります。

待遇と仕事環境も恵まれている     

少し現実的な話になりますが、海外ポスドクの待遇は悪くないものが多いです。もちろんポストに大きく左右されますが、概ね海外ではアカデミアへの待遇は、社会人の平均収入よりも高めに設定されています。昨今の日本のポスドクの待遇は不安な面が多いかもしれませんが、海外ではあまり心配にならないと思います。また、ワーク・ライフ・バランスが重視されていることが多く、ハードウェア面においても、ジェンダー間の平等さや役職がもたらす地位の違いの少なさなどの面においても職場環境が整っているところが多いです。そういう意味でも、職場の選択肢としては悪くないと思います。

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でも、わたしにできるだろうか?

海外でポスドクをやることにはとても魅力を感じるが、自分がうまくやっていけるかどうかを悩む人も少なくないでしょう。特に日本人の中には、語学力や文化適応を懸念して海外に行くことをためらう人も多いように見えます。しかし筆者が思うに、海外という「よくわからない環境」に行くことは不確実性が高いのは否定できませんが、ハードルをあげすぎる必要もないのではないでしょうか。

語学は現地で伸ばせば良い

最大の懸念事項である語学に関しては、出発する段階で完璧を目指す必要性はありません。昨今の研究者は、英語で論文を読んだり書いたりできますし、国際学会で発表したり発表を聞いたりすることも多いでしょう。これらができていれば、基本なんとかなると思って頂いて大丈夫です。多くのポスドクの募集には語学力について明確な基準を設けていますので、それを参考にすると良いでしょう。

もちろん、だからと言って語学で苦労しない訳ではありません。いざ行ってみれば、相手の喋り方が速すぎたり、ひどく訛っていたりして、会話でおいてきぼりになることもあるでしょう。しかし、そういったものは現地に行って、現地語に「浸かっている」状態で学ぶのが最も速いです。実際に現地の方と交流しているときに、拙い表現を使っても、文法が間違っていても、相手がネイティブなら意味をキャッチできます。語学力よりも、恥ずかしがらずに「ごめん、もう一回言ってくれる?」と聞ける図太さが一番重要な力かもしれません。

文化適応はオープンな心で

もう一つよく懸念されているのは、現地の文化に適応できるかです。一口に「文化」と言ってもいろんな内容が含まれていますが、この場合では、コミュニケーションの取り方や、社会におけるさまざまな暗黙のルールについてでしょう。この点に関しては、人それぞれに相性があるので、一概には言えませんが、いろんなカルチャーショックに対して「へーそうなんだね」とオープンに、ときには楽しむ態度で受け入れることができるようにすると、ストレスは少ないでしょう。

個人的な経験としては、欧米の方々は個々人の自由を尊重する人が多く、「こうであるべき」や「マナーがなってない」など、こちらが思うほどいちいち気にしていません。ましてや日本文化に興味がある人も多く、文化の違いがむしろ話のネタになったり、交流のきっかけになったりもします。身構えしすぎずに飛び込むことができるかを、いま一度自問してみると良いかもしれません。

それよりも胃腸は大丈夫か

筆者の周りに胃腸が弱い人が多いからか、それとも筆者が食いしん坊なだけなのか、職よりも食に関して色々考えてしまいます。実際に長期的に生活してみると、自分の胃腸が気持ちよく受け入れられる食事を継続的に食べられるかどうかが死活問題になります。欧米に関しては、衛生環境は整っているので問題は少ないと思いますが、胃腸が弱めな方や食にこだわりがある方は、自炊の腕を磨いておくことをおすすめします。

次回は、いざ「海外に行こう」と決めた時に、どのように海外のポスドクのポストを探すか、何を準備するかなどについてお話します。またお会いしましょう。

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[文責・LY博士(文学)

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