日本で1万人に1人の希少人材! 博士・ポスドクってどんな人たち?

ポスドク総研
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最近よくきく「博士」や「ポスドク」ってどうやって生まれるの?

学歴として「学部卒」はよく聞かれますし、いわゆる理系であれば「修士卒」の新卒を多数採用している企業も見られます。しかし、「博士」や「ポスドク」についてはまだ数が少なく、具体的にどのような経歴を持っているのか、ということはあまり知られていません。今回は博士やポスドク達がどのように生まれ、どのような経験を積んでいるのかを紐解いていきます。

博士になるためは

博士になるためには、大学の上位組織である大学院の博士課程に進学する必要があります(修士課程を「博士前期課程」と呼ぶ場合もあり、その際は博士課程は「博士後期課程」と呼ばれます)。博士課程に進学するには、大抵の場合修士課程を修了している必要があります。修士課程は在籍期間が2年間ですが、博士課程は1年長い3年間であることが標準的です(早期修了が可能な場合もあります)。この3年間で研究者として鍛錬を積み、博士論文を書き上げ提出し、審査を通り博士学位を得ることが博士課程の主目的の一つです。

修士課程・博士課程をストレートで修了した場合、学部卒+5年で27歳前後になります。ただし、博士論文を執筆し提出するには、各大学院が設定する基準をクリアする必要があります。それは、「査読付き論文」(論文を掲載する前に、「査読」と呼ばれる同じ分野の研究者による厳しいチェックが行われ、そのチェックを通過した論文を「査読付き論文」と呼びます)の本数や、同じく査読が行われる学会発表にいくつ発表しているか、など、一定以上の対外的な業績を設定しているところが多いです。他にも、学内の中間審査を通過する必要がある、など、大学院や分野によって大きく異なります。これらの基準を3年以内にクリアすることは、分野や研究内容によっては難しいことが多く、また各個人の状況や様々なタイミングが合わなかった場合、あっという間に3年を過ぎてしまいます。このように、博士課程の3年間の間に博士論文を執筆できなかった場合、「単位取得満期退学」となり、博士課程を終えてはいるが、学位を持っていない状態となります。ただし、この後も一定期間であれば博士論文を提出する資格は残っており、その期間中に提出をすることで博士の学位を得ることができます。

単位取得満期退学の方々は、博士課程3年間の間に博士論文を提出しなかったため、一旦退学する、という扱いになっていますが、決して研究能力面で劣る、というわけではありません。円滑に研究を進めていこうとする博士課程の大学院生には、様々な邪魔が入ってきます。例えば、論文の査読には基本的に長い時間がかかり、長い場合は一つの論文を投稿してから採択されるまで数年かかる場合もあります。また、研究費や生活費の資金繰りが苦しくなり、思うように研究を進められなかったり、指導教員やその他の研究者との折り合いがうまく行かなくなってしまうことも多々あります。また、予測できない制度変更が行われた結果、あてにしていた資金が手に入らなかったり、天災や恐慌・政治的な変動など、全く予測も対処もできないような事柄の影響で、海外渡航ができない・物が手に入らなくなり研究が進められない、ということもあります。それ以外にも、「自分の満足する博士論文が完成しなかった」という理由で、自分の意志で3年以上の時間をかけて博士論文を執筆する人もいます。このように、単位取得満期退学となる方々が抱える理由は様々なのです。

ポスドクになるためには

ポスドクとは、「ポスト(~後の)・ドクター(博士)」の名の通り、「博士学位を取った後、研究を続けている人々」の総称です。ポスドク(研究員)は正式には職種名であり、「博士学位を持つ研究員」のことですが、昨今様々な文脈で用いられており、一部では「博士の学位を取得したにもかかわらず、定職に就けていない人々」というややズレた定義で使われていることがあります。

本稿では職種としてのポスドクについて説明します。ポスドクになるには、ポスドクを募集している研究機関に応募をして、採用されることが必要です。また、日本学術振興会が募集するポスドクの場合は、日本学術振興会に申請を行い、採用された場合は自分で研究を行うにふさわしい研究室を選択し、受入交渉をします。

ポスドクは、大学院生と異なり「独立した研究者」として扱われます。採用先の方針にもよりますが、指導を受けるのではなく職業として主体的に研究を行うことができます。独立した研究者として研究を行い、その対価として報酬を得ることは誇らしいことですが、一般的にポスドクは任期と呼ばれる1年~5年の期限があり、期限が終われば問答無用で雇用が終了します(延長されることもありますが、予算やその他の状況に依存するため、確実ではありません)。そのため、ポスドクたちは中長期的な未来が描けないまま、短期的な業績をなるべく多く積みあげて次の職を探し、確保することに追われ続けています。これは、任期の無い職を得られるまでずっと続きます。

博士課程の大学院生やポスドクのことをよく知るためには

大学院生やポスドクについて、主に当事者から様々な情報が発信されていますが、研究に必要な能力や事柄、研究スタイル、研究に対する思想などは分野によって大きく異なります。そのため、「博士人材」「ポスドク人材」と十把一絡げに語ることはとても難しいです。ただ、彼らのことをよく知る方法はあります。それは、こちら側の思い込みを一旦脇に置いた上で、彼ら自身に自分のことを語ってもらうことです。

彼らが得意とするのは、もちろん自身が行ってきた研究内容・研究テーマについて語ることですが、その面白さをきちんと理解するには、こちら側にもその分野の素養が必要となり、難しい場合があります。ただし、その研究をどのようにして始めたのか、どのような点が面白いのか、博士課程・ポスドクの間にどのように過ごしてきたのか、国外での経験はあるのか、研究室はどのような環境であったか、どのようなことで困ったのか、楽しかったことは何か、今取り組んでいることは何か、などなど、「博士課程・ポスドクとして過ごした体験・経験」を聴くことで、彼らが研究を通して得てきた様々な力についてうかがい知ることができると考えられます。その中には、当人すら気づいていない「活躍にふさわしい力」が潜んでいる可能性もあります。少し時間はかかりますが、様々な独自の経験を積んでいる大学院生・ポスドクたちに対しては、こちらも自由度の高い対応が必要なのかもしれません。

[文責・平田 佐智子(博士(学術))]

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