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ポスドク総研
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新型コロナウィルス

新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)の症例は、2019年12⽉に中国湖北省武漢市で初めて報告されました。その後、中国の全ての省に蔓延し、アジア、ヨーロッパ、北米、アフリカ、オセアニアなど全世界に拡散。世界の感染者は2,530万人を超え、死者は84万人を超えています(2020年9月2日現在)。

日本国内では、全ての都道府県で感染者が確認されており、その数は68,000人を超え、死者が1,200人を超えました。感染者は依然として増加し続けています。感染症の流行とともに「三密」や「社会的距離(ソーシャルディスタンス)」という⾔葉が次第に巷間に広まりました。人々は、お互いの距離を保ち、行動を自粛し対面する場面を減らすなど、他者との関わり方が変化し、仕事や生活様式もカタチを変えています。

テレワーク

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、世界的に在宅勤務(WFH: Work From Home)が注目されています。日本では在宅勤務を含むテレワークが「働き方改革」 の一環として政策的に推進されてきたものの、現実の実施率は低いままでした。しかし、新型コロナウィルスが拡大を始めた 2020年3月頃から急速に在宅勤務が広がりました。図1にある通り、現在は雇用者のうち在宅勤務実施者のシェアは約3分の1に上っています(経済産業研究所 2020内閣府 2020b)。

テレワーク実施率の推移

図1. テレワーク実施率の推移
(パーソル総合研究所(2020)を参考にアカリクが作成)

また、テレワークは、高学歴(図2)、高賃金(図3)、主に都市部の大企業(図4)に勤務するホワイトカラー労働者(図5)が実施する傾向が強く、感染リスクと外出自粛措置が経済格差拡大的に働く可能性が示唆されています。

[学歴別]テレワーク実施率

図2. [学歴別]テレワーク実施率
(経済産業研究所(2020)を参考にアカリクが作成)

[年収別]テレワーク実施率

図3. [年収別]テレワーク実施率
​(経済産業研究所(2020)を参考にアカリクが作成)

[企業規模別]テレワーク実施率

図4. [企業規模別]テレワーク実施率
(パーソル総合研究所(2020)を参考にアカリクが作成)

[業界別]テレワーク実施率

図5. [業界別]テレワーク実施率
(経済産業研究所(2020)を参考にアカリクが作成)

就労者への影響

図6-7のグラフは、現在と昨年における就労者の1週間の時間の使い⽅を表したものです。感染症流行の影響により、通勤時間を含めた「就労時間」が1.39時間(約1時間23分)減少しており、その分が「余暇」と「家事・育児」に回っていることが分かります。

takaya08-現在の時間の使い方(単位:時間)

図6. 現在の時間の使い方(単位:時間)
(江夏ら(2020)を参考にアカリクが作成)

takaya08-昨年の時間の使い方(単位:時間)

図7. 昨年の時間の使い方(単位:時間)
(江夏ら(2020)を参考にアカリクが作成)

就労時間は減少していますが、職場での業務上のコミュニケーション(「同僚や上司との仕事上、不可⽋のコミュニケーション」)は増加傾向にあります(図8)。その⼀⽅で、雑談などの非公式のコミュニケーション(「同僚や上司との仕事とはあまり関係ないコミュニケーション」)は減少傾向にあり、このことが「職場の結束感や⼀体感」や「会社への愛着」を低下させている可能性があるとされており、それに伴い、回答者のおよそ 25%の人が孤立感を感じています。

takaya08-職場での同僚や上司とのコミュニケーションの変化

図8. 職場での同僚や上司とのコミュニケーションの変化
(江夏ら(2020)を参考にアカリクが作成)

内閣府(2020a)の調査によると、今回の感染症の拡大によって、半数以上の者が「仕事に対する意識に変化がある」と回答しており(図9)、「仕事と比べて生活を重視するように変化した」との回答が約5割であると報告されています(図10)。

takaya08-仕事に対する意識の変化

図9. 仕事に対する意識の変化
(内閣府(2020b)を参考にアカリクが作成)

takaya08-家族・仕事の重要性の変化

図10. 家族・仕事の重要性の変化
(内閣府(2020b)を参考にアカリクが作成)

特に子育て世代では、全体の7割以上が「家族と過ごす時間が増加した」と回答しており(図11)、さらにその中の8割が「今後も保ちたい」と答えています(図12)。

takaya08-子育て世帯の家族と過ごす時間の変化__

図11. 子育て世帯の家族と過ごす時間の変化
(内閣府(2020b)を参考にアカリクが作成)

takaya08-家族と過ごす時間が増加した者の今後の希望_

図12. 家族と過ごす時間が増加した者の今後の希望
(内閣府(2020b)を参考にアカリクが作成)

感染症影響下において、家族の重要性をより意識するだけでなく、地方移住への関心が高まる等、就労者の意識には様々な変化がみられます。

産業界への影響

人々の⾏動⾃粛は、飲⾷業、宿泊業、⼩売業、教育業をはじめ、幅広い業界の活動に影響しています。多くの事業者が休業や縮⼩、営業時間の短縮を余儀なくされ、雇⽤調整や倒産のリスクも⼤きくなりつつあります。

⼀⽅で、こうした状況に柔軟に対応している企業もあります。例えば、飲⾷事業者は持ち帰りや宅配での提供を開始し、メーカーは感染防⽌拡⼤に資する衛⽣マスクや検査キットを新規に開発・製造しています。

また、オンライン・コミュニケーションの事業者がセキュリティ強化に乗り出すなど業容を拡⼤しているところもあります。

アカデミアへの影響

科学技術・学術政策研究所(2020)の調査によると、博士課程在籍者の85%、博士課程修了者・退学者の79%が「研究に支障が出た」と回答しており(図13)、博士課程在籍者の3割以上が博士取得が遅れる可能性があると回答しています。

takaya08-[博士課程]研究活動への影響

図13. [博士課程]研究活動への影響
(文部科学省科学技術・学術政策研究所(2020)を参考にアカリクが作成)

具体的には、

・研究機関や施設への立ち入り制限
・外部組織との共同研究の停滞
・実験動物、植物等の維持・管理に関わる負荷の増加
・研究のテーマ変更や、実験・調査の遅延
・講義のオンライン化により、資料作成等に費やす時間の増加

というように研究活動に影響を及ぼしています(科学技術・学術政策研究所 2020)。一方で、世界的な研究活動のデジタル転換の流れが、感染症流行を契機にして加速しており、ビッグデータ解析の手法やAI、遠隔地での観察画面を見ながら現地スタッフと協力しての実験の実施等、日本でも研究環境や研究手法のデジタル転換を推進する動きが加速化しています(内閣府 2020a)。

最後に

感染症の流行によって、これまでにない規模での被害や生活の変化が生まれています。職場や学校では、会議室に皆が集まって話し合う姿は昔のものとなり、在宅で作業をする人が増え、オンラインで人をつなぐビデオ会議が当たり前になりました。より使いやすいようにツールの技術も進化しつつあります。「3密」である満員電車を避けるため、通勤・通学を自転車や相乗り配車に変える人もいます。テレワークの促進により、不要となったオフィス面積を減らす企業がある一方、郊外に散らばろうとする動き等も出ています。

感染症との戦いは長期化しますが、打開策を模索する期間は、新しいカタチの産業・アカデミアのあり方を創りだす、貴重な実験の期間でもあります。私たちは感染症拡大への対処のなかで、サイバー空間の積極的な活用を余儀なくされ、デジタル技術の発展に拍車をかけています。このような変化は、より良い社会である「Socity5.0」への足がかりともなっているのです。

[文責・高谷翔太]

参考文献

■江夏幾多郎・神吉直人・高尾義明・服部泰宏・麓仁美・矢寺顕行(2020)「新型コロナウイルス感染症の流行への対応が, 就労者の心理・行動に与える影響」リクルートワークス研究所
■経済産業研究所(2020)「コロナ危機下の在宅勤務の生産性: 就労者へのサーベイによる分析」
■内閣府(2020a)「資料7 新型コロナウイルス感染症を踏まえた科学技術・イノベーション政策(竹本臨時議員提出資料)」『第7回会議資料:会議結果 令和2年』
■内閣府(2020b)「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」『満足度・生活の質を表す指標群(ダッシュボード)
■科学技術・学術政策研究所(2020)「博士課程在籍者・修了者(博士人材データベース登録者)に対する「新型コロナウイルス流行の研究活動への影響等に関する調査」の結果(速報)の公表について」
■パーソル総合研究所(2020)「調査 第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

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