コロナ禍の海外学会:事前準備・実体験・注意事項

博士の日常
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コロナ禍も3年目の折り返し地点を過ぎました。マスクの着用、人々の移動や集まりなど、諸方面においての規制も緩和の兆しが見え、昨年まではほとんどオンライン開催だった学会も、少しずつ対面開催もしくはハイブリッド式に切り替わりました。

特に欧米ではマスクの規制や入国の制限がなくなることによって、世界中の参加者を迎え入れる国際学会も開催されるようになってきました。筆者もつい先日にデンマークで開催された小規模の学会に参加してきました。

久々の対面学会にはとても興奮させられましたが、コロナ禍前と比べると状況の変化が大きく、準備すべきことも増えました。そもそも「長距離移動が久しぶりすぎて何を準備すればいいかわからなくなってきた」と感想を抱く人も少なくありません。

今回は筆者の直近の海外学会参加体験と、そこで得られた経験についてご紹介します。これから旅するみなさんの参考になれるなら幸いです。

本編の前半ではコロナ禍のなかの海外学会のために必要な準備や注意事項について述べ、後半では今回のデンマークで開催された学会で見られた現地の雰囲気について述べます。

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出発前の準備

とにかく航空券が高い

コロナの影響で航空便の数が大幅に減らされたことや、燃油価格の高騰による国際航空燃油サーチャージの大幅な値上げの影響などを受け、国際航空券の値段は世界規模で高くなっています。そこに円安のダブルパンチが加わりますから、今の国際航空券は私たちが記憶しているものとは桁違いなほど価格高騰しています。

予算面ではある程度の覚悟や工夫が必要になるということです。

実際には、筆者や同じ学会に行った方々が購入した日本–デンマークの往復航空券は40万〜50万円台であり、想定していた値段の倍ほどでした。別の研究者に聞いた話では、8月末のイタリア・シチリア島への往復航空券の値段は最安ルートでも100万円の大台に乗り、以前なら余裕でファーストクラスに乗れるほどの金額になっていたとのことです。

研究費であれ私費であれ、使える予算は限られているので、旅費の高騰はとてもシビアな問題になります。学会参加を断念したり、日程の変更や短縮を余儀なくした方も少なくありません。

オンライン国際学会は時差の問題や参加している感覚がないなど、さまざまな問題が指摘されてきましたが、参加費を払うだけで国際の舞台で学術交流ができるという点において、研究費の多寡がもたらす格差が少ない点では、やはり肯定すべき部分もあると言えます。

渡航書類の変更点に注意

相手国のビザの要求

日本の水際対策が典型例ですが、コロナ対策の一環として、海外からの人の流れをコントロールする政策を打ち出した国は少なくありません。これまでは日本のパスポート所持者はビザ申請なしで訪れることができた国でも、ビザを要求されることや、あらかじめ手続きが求められることがあります。

ワクチン接種証明・出国前PCR検査

相手国が来訪者にコロナ対策に関する要求をする場合も珍しくありません。例えば同じ日本国籍の来訪者でも、ワクチン接種証明を提出できる人なら入国が許可されますが、未接種の人は入国できないと決めている国はまだ世界規模でかなりあります。また、日本と同様に、相手国に入国する直前(例えば飛行機搭乗72時間以内)のPCR検査の陰性証明を要求する国もあります。

これらの政策は個々の国によって変わりますので、必ず行き先の国の政府や駐日大使館・領事館が公開している最新情報をチェックしてください。書類の準備は時間を要することが多いですので、渡航を決めたら必ずすぐに情報を集め始め、準備のスケジュールを考える必要があります。また、コロナに関連する政策は短期間で変化があることも多いため、常に最新の情報のチェックを欠かさないようにしてください。

乗り継ぎの場合は経由国・空港のルールも確認

欧州などの遠方に向かう場合、搭乗時間や航空券の値段の問題で、直行便ではなく乗り継ぎ便を選ぶことも多いです。その際には、乗り継ぎする空港が求める書類と手続きの確認もする必要があります。

特に宿泊を伴う乗り継ぎでは、一度空港を出てトランジットホテルに泊まることもあります。空港の入国審査を通過するかしないかによって、必要な書類(トランジットビザやワクチン・PCR検査証明)が大きく異なる可能性があります。忘れずに確認してください。

日本の水際対策とその変化

日本帰国前PCR検査の要求に変化あり

筆者が海外学会に出向いた7月下旬では、日本は水際対策として帰国前のPCR検査陰性証明を求めていましたが、最新の情報では2022年9月7日からはこの要求が緩和され、ワクチン3回分の接種証明によって代用できるように変更されます

参考URL:読売新聞オンライン 
入国者数の上限、5万人に引き上げ…72時間前陰性証明書の提示不要など水際対策を緩和

帰国前PCR検査がもたらしていた不確実性

帰国前PCR検査結果が求められていた期間中、この検査は旅に対して最大の不確実性をもたらしたものと言っても過言ではありませんでした。その理由は2つあります。
一つは現地で検査を受けるための時間的・金銭的・精神的負担です

帰国時PCR検査が求められる際には、帰国時の日本行きの飛行機の出発時間の72時間前から出発時間までの間にPCR検査を受け、かつ陰性の検査結果を取得することが帰国便の搭乗の前提条件となっていました。そのため、帰国時間から逆算し、どの日のどの時間以降にPCR検査を受けに行くか、現地のどこに検査を受けに行き、検査結果をどう受け取るかなどを、あらかじめ調べておく必要がありました。

しかしながら、情報が全てオンラインで見つかるとは限らないこと、会議日程中に抜け出す必要があること、勝手のわからない異国の地でPCR検査センターを探し移動する必要があることなど、色々と大変なことがあります。

また、日本が求めるPCR検査結果に掲載される項目は下記の通り決まっていましたが、海外の検査機関が発行する検査証明にこれらの情報が全て含まれているかどうかは保証されていません。そのため、あらかじめ検査機関に証明書の記載内容を確認する、もしくは「日本フォーマット対応」と明記している検査機関にPCR検査を受けに行くことで対応する必要がありました。筆者は後者で対応することにしましたが、そのためデンマーク政府が運営する無料のPCR検査センターでは検査を受けることができず、比較的にアクセスの悪いところにある民間検査機関が提供する有料サービスを使わざるを得ませんでした。

*9月1日時点で、厚生労働省が求める検査結果記載項目の内容は以下の通りです。
参考URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00248.html
(1)氏名
(2)生年月日
(3)検査法(有効な検査方法を参照)
(4)採取検体(有効な検体を参照)
(5)検体採取日時(検体採取のタイミングを参照)
(6)検査結果
(7)医療機関名
(8)交付年月日

二つ目の不確実性は、現地で新型コロナウイルスに感染することへのリスクです。

帰国前にPCR検査で陰性を確定させる必要があることは、裏返せば、陰性にならない限り帰国できないということを意味します。運悪く現地で新型コロナウイルスに感染してしまったら、完治かつ陰性に転じるまでは帰国ができず、ずっと現地で足止めをされることになるということです。

後述にもあるように、欧米では一般な場面でのマスク着用規程が取り消されており、感染対策は日本に比べると非常に緩くなっています。オミクロン株の強い感染力とも合わせて、そのような環境下では自分がいくら感染対策に気を使っても、運悪く感染してしまう場合があります。

筆者の同行者にも残念ながらその事態に陥ってしまった方がいて、回復まで2週間ほど現地で足止めされてしまいました。

国として水際対策をとることの合理性と必要性はもちろんありますが、そのような事態の中に身を置くことはどうしても精神的負担をもたらしてしまいます。せっかくの海外滞在にも関わらず、現地での行動を自己制限せざるを得なかったり、PCR検査の結果が出るまでは常にどこか気を張ってしまったりしています。「感染したらどうしよう」と戦々恐々して過ごすのは、決して楽しいことではありません。

新型コロナウイルス感染症対応の海外保険は必需

 新型コロナウイルスへの感染は個人の努力だけで防ぎ切れるものではありません。万が一感染してしまった場合は、現地での医療機関受診や複数回のPCR検査のための費用、そして現地で足止めされた場合の滞在費や航空券の変更費など、十万円単位の出費が発生してしまいます。そのため、出発前には必ず新型コロナウイルス感染にも対応し、かつ十分な保障内容を提供している海外旅行保険に加入しておいてください。

下記の数例を挙げておきますが、大手保険会社ではそれぞれコロナ感染症対応の海外旅行保険商品が発売されています。ざっくり言えば同じような保障を提供してくれていますが、詳細の保障内容に違いがあります。是非詳細を確認し、自分の状況に最も適しているものを選んでください。

オンラインで加入でき、自分で証明書類などを印刷できるものがほとんどですから、加入は面倒ではないと思います。

参考URL:大手保険会社が提供する新型コロナウィルス感染対応の海外旅行保険
損保ジャパンの商品「off!」:https://www.sompo-japan.co.jp/kinsurance/leisure/off/
エイチ・エスの商品「たびとも」:https://www.hs-sonpo.co.jp/travel/
ソニー損保の海外旅行保険:https://www.sonysonpo.co.jp/travel/

ワクチン接種証明アプリと証明の画像は必ず確保

9月7日からの水際対策の変更がありますので、あらためてワクチン接種証明書が取り上げられていますが、これまでも旅行中や帰国時に接種証明は必要不可欠でした。目的国の入国時に提示を求められることもありますし、現地で特定の施設やレストランなどの場所に入る際に提示を求められることもあります。

筆者が使用した感想としては、デジタル庁が発行する接種証明アプリは使いやすかったです。出発前に確実に準備しておきましょう。

参考URL:接種証明アプリ(デジタル庁)
https://www.digital.go.jp/policies/vaccinecert/

あらかじめご自分のスマホにアプリをインストールし、マイナンバーカードを読み取るなどして自分の情報を取り込めば準備完了です。

また、最新のアップデートでは接種証明書のスマホ画面(QRコードや氏名などの情報)をまとめて画像として保存できるようになりましたので、スマホの写真フォルダに保存しておけば、海外でインターネットにアクセスできない時も安心です。

My SOSで日本入国時の手続きはスムーズ

コロナ禍の初期では厳しい水際対策によって日本入国の際に大変時間がかかっていましたが、今では流れが大きく改善されています。

ファストトラックとも呼ばれていますが、入国検疫手続き段階よりも前にMy SOSというスマホアプリまたはWEBサービスに接続し、個人の情報・ワクチン接種情報(これまでは帰国時PCR検査結果証明のアップロードも)を登録しておけば、入国時はスマホ画面を提示するだけでスムーズに検査を通過することができます。こちらも、日本出発前にスマホに準備しておけば安心です。

参考URL:厚生労働省・入国者健康確認センター
ファストトラックとは:https://www.hco.mhlw.go.jp/faq/fasttrack.html
My SOSアプリについて:https://www.hco.mhlw.go.jp/result/none.html

旅行中の体験と注意事項

さて、出発前から色々とこれまでの旅行に必要ではなかった準備をしたり、万が一感染した場合のことを考えたりと、若干ストレスフルなスタートになってしまいましたが、いざ飛び出してしまえば、それなりに楽しいものです。

マスクからの解放と「同調圧力」

 欧米諸国のほとんどでは、マスク着用の義務は無くなっています。飛行機に搭乗している間はマスク装着が求められます(そして自分の安全のためにも着用することをお勧めしたい)が、それ以外の状況でマスクを着用している人は非常に少なくなっています。少なくとも室外にいる間にマスクを着用している人は、筆者及び日本から来た同行者以外は皆無と言っても良いくらいでした。買い物をするお店も、レストランも、電車などの公共交通機関も、あまりマスク着用者の姿が見えません。

そこまでマスク着用者が少ないと、つけているこっちの方が居心地悪くなります。すれ違う人の視線が、ほんの一瞬だけですが、マスクの上に止まってしまうことが感じ取れます。マスクをつけずに「みんなと一緒になること」への圧力がそこから微かに伝わってきますが、心理学者としてはそういった同調圧力を噛み締めるのも面白いことです。

 とはいえ、滞在していたコペンハーゲンは人口密度がそこまで高くない地域であることもあり、筆者も徐々に室外ではマスクを外して過ごすようにしました。久しぶりに外の空気や陽の光が顔の下半分の皮膚に直接触れること、濾過されていない空気がいろいろな匂いと一緒に鼻を通ること、声を張らなくとも周りと喋れること、それらが全て新鮮に感じてしまい、とても感慨深かったです。そのような環境の違いと心境の違いを体験できるのも、旅の醍醐味ではないでしょうか?

学会の気遣いと抗原検査キット

自由の空気を愉しむのは良いですが、最大の目的である学会参加は怠ってはなりません。多くの人々が集まるところですので、それなりの配慮はされています。

筆者が参加した学会は参加者数が200人未満のアットホームな学会であることもあり、そして現地では直前に学会で大きな新型コロナウイルスのクラスターが発生してしまった教訓もあり、学会主催者による新型コロナウイルス対策の気遣いは素晴らしいものでした。

参加者に対して「室内ではマスクをつけましょう」と呼びかけるだけではなく、高性能の不織布マスクと学会日数分の抗原検査キットが全ての参加者に提供されていました。参加者は毎朝ホテル内で各自抗原検査を行い、陰性が出たことを確認して安心して学会の場に出席していました。そして他の参加者もそれを行っていると、互いに対する信頼が成り立ち、学会会場内にいる間も大きなストレスを受けることなく過ごせました。

抗原検査の信頼性の問題はさておき、主催者側は与えられた条件下で最大限の安心感を与え、参加者側は他者に対する責任感を持ち、共に学会という合同イベントを成立させたように見えます。

また、イギリスから来た参加者の話を聞くと、そちらでは抗原検査キットは政府より無料で供給され、人々は「流れるように自分の鼻に綿棒を突っ込む(抗原検査を実施)」くらい検査にいるそうです。公共の場に出るなら、まずは陰性であることを確認する、ということが当然の行動として行われているようです。

日本では「withコロナ」が叫ばれて久しいですが、本当の「withコロナ」の事例を目の当たりにすると、色々と考えさせられてしまいます。とりあえず国内における抗原検査キットの供給不足を解決していただきたいと思っています。

欧州の空港事情と注意事項

 日本のニュースでも取り沙汰されていましたが、欧州の主要空港では大きな混乱が続いていました。主な理由としては、コロナ禍で多くのの従業員が航空会社や空港から解雇されましたが、いざ空路再開になると人手が足りず、かつ解雇された従業員も会社への不信感を抱き、元の職場に復帰してくれない、ということだったらしいです。

旅行者に対しての影響は甚大です。預け荷物の紛失が多発し、持ち主不明の手荷物が空港内で山積みにされてしまっていました。また、人員不足により航空便が急にキャンセルされたり、大きな遅れが生じてしまったりすることもありました。さらに、空港保安検査が十分に稼働できず、保安検査を通過するため1時間以上の列を待たないといけないこともありました。待遇に不満を持つ労働者が一斉ストライキを起こすこともあり、その日の航空便が全てキャンセルになってしまうこともありました。

そのため、旅行者としてはできる限りの予防策や対策をとることが必要です。

まず言えるのは、とにかく旅程を組むときは、乗り継ぎ時間を長めに組み、また空港での移動もいつもの倍くらいの余裕を持って行動することです。いつものようにスムーズに流れるわけではないことをくれぐれも念頭におきましょう。

次に欧州で流行っている手荷物紛失対策をご紹介します。

できれば機内持ち込み荷物だけにして、チェックインの荷物を持たないようにすることはまず言えることですが、海外旅行の荷物量を考えると、あまり現実的ではないかもしれません。

そこで活躍するAppleから発売されているAir Tagという商品が便利です。五百円玉くらいのサイズのボタン型デバイスであり、常にGPSでデバイスの所在地が記録され、かつバッテリーも比較的長持ちなのが特徴です。手荷物などに入れておくと、荷物の在処をすぐにスマホからチェックできます。ロストラゲージ問題が発生した場合、せめて自分の手荷物は今どの空港にあるかを確認ですることができ、問題解決につながりやすくなるとされています。

[文責:LY / 博士(文学)]

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