続・ポスドクの改姓事情 証明書類の旧姓併記

博士の日常
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はじめに

以前、ポスドクの改姓事情<https://acaric.jp/articles/postdoc/2523>

という記事を書きましたが、以来、大学院に在籍しながら結婚した後輩の話など、改姓した学生やポスドクの方々から話を聞くことが増えました。

なかには、改姓による不便を嘆く人もいますが、自分の名前が変わることを一大イベントとして楽しんでいる人も多く、「貴重な経験の機会は逃したくない」という研究者精神で各種の改姓手続きのわずらわしさを乗り切ったという話も聞きます。

生まれ持った自分の名前が変わること、そのこと自体に対しては特にネガティブなイメージを持っているわけではなく、逆に前向きにとらえている人も珍しくはありません。しかし、それまでの業績との整合性や調査地での人間関係の維持のため、研究生活における通称としては旧姓を使い続けることが一般的です。

大学における改姓の扱い

通常、多くの大学は「通称名制度」または「別名使用申請」などと呼ばれる、学生が戸籍名以外の名前を登録できるシステムを用意しています。改姓した学生のほか、性別違和や外国籍の場合など、戸籍名と違う名前で社会生活を送っている学生が使うことができる制度です。

学生証や成績通知に記載される名前や、履修登録の際に使われる名前には大学に登録された名前が適応されますが、偽装を防ぐ目的もあり、卒業(修了)証明書については戸籍名に準拠するという大学もあります。また逆に、大学では一貫して登録名での管理を行うので、戸籍名記載の証明書の発行には特別な手続きが必要になる場合もあるようです。

在学中に改姓した場合だけではなく、卒業(修了)後に改姓する人の例は多くあるはずですが、その場合も、卒業(修了)証明書についての対応は分かれています。原則在学中に登録された旧姓名でしか発行できないとする学校と、戸籍名での発行を基本とする学校、戸籍抄本等の提示によって、希望に応じる学校等があります。

身分証明書の旧姓併記

旧姓で行ってきたそれまでの研究上の経歴と、結婚後の戸籍名となった新姓での証明書類とを併用しなければならない場面では、「両方の姓が共に自身のことを示すものである」という証明を求められることになります。戸籍謄本・抄本が公的な証明になりますが、注意が必要なのは、本籍地の市区町村でないと発行できない点です。現住所の市区町村でも発行できるものに、住民票がありますが、こちらには通常、旧姓の表記はありません(2019年より、希望する場合には手続きをすることで旧氏の併記が可能になりました。)。都度、戸籍謄本・抄本を提示するのも抵抗があるという場合、取得するのが容易ではない場合に「身分証明書に新氏と共に旧氏を併記する」という方法があります。

2019年末頃から、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートは、それぞれ旧姓が併記できるようになりました。

いずれも写真付きの公的な公的な身分証明書として扱われているものなので、これにより旧姓での身分証明ができると、学会等の研究活動だけでなく、銀行や各種の契約等、様々な場面で旧姓を使える可能性が増えます。金融機関によっては、旧姓での口座も維持できるということがあるそうです。

※ただし、あくまで「旧氏」として利用できる場合があるというだけなので、婚姻による「改氏」の手続きが不要になるわけではありません。また、不動産における複数名義の併用は悪用のリスクも指摘されており、今後新たな対策がとられることも予想されます。

こういった各種身分証明証の旧姓併記のための手続きには、「当該の氏が記載されている戸籍謄本等から現在の氏が記載されている戸籍に至る全ての戸籍謄本等が必要」となります。本籍地から離れた場所に居住している場合、本籍地を変更している場合など、人やタイミングによっては手続きのハードルが高いことにはかわりありませんが、一度手続きを済ませておけば、いつでも持ち歩ける身分証明書で旧姓の証明ができることは利便性がありそうです。

パスポートの旧姓併記の落とし穴

日本国内における身分証明証については、実は「旧姓の証明はさほど重要ではない」、「旧姓併記の身分証明書に必要を感じない」という人もいます。「結婚したら姓が変わる」ということが社会通念化しているところもあり、姓が異なることを指摘された場合、「結婚による改姓」と説明すれば事足りるためです。行政等、公的な手続きの際には証明が必要になりますが、旧姓を用いるのが仕事や研究の場面のみに限られる場合は、大学等の職場のほうで対応してくれるので、大きな問題に感じることは少ないということです。

問題になるのは、外国での研究活動の場面です。
「夫婦別姓の選択肢がないこと」、
「社会的に用いている姓と戸籍上の姓が異なること」
このふたつの説明に苦労することも少なくないのです。

夫婦別姓が認められている国の文化圏からみると、社会生活上の姓と身分証明書の姓をあえて分けているように見られ、偽装や詐欺を疑われてしまうという話もあります。

パスポートの旧姓併記はひとつの解決策になりそうですが、実はそうでもありません。

ある知人は、結婚後のフィールドワーク(現地調査)でパスポートを取り直す必要が生じた際、当初は旧姓併記を希望していましたが、結局結婚後の氏である戸籍姓で取得したといいます。
書類を揃え、パスポートセンターで旧姓併記を希望する旨を伝えたところ、センターの職員から特別な理由があるのかと確認をされ「もし迷っているのなら考え直すほうがいい」と助言されたそうです。

フィールド(調査地)ではそれまで通りの旧姓を使い続ける予定であったこと、研究費の精算の際、航空券の記載名が大学の登録名と一致したほうが都合が良いと考えたこと等、理由はいくつかありましたが、その場で職員から旧姓併記のデメリットについて聞き、旧姓併記は断念することにしたということです。

実は日本のパスポートの旧姓併記は、

「国際規格に準拠しない例外的処置」

です。

旧姓はパスポートに印字はされるのですが、国際規格にあわないためにICチップには記載されません。印字とICチップとで内容が異なるため、外国での出入国の際に説明を求められたり、偽造パスポートと疑われて止められる可能性もあります。また、あくまでパスポートの印字のみが旧姓併記になることで、ビザや航空券、予防接種証明書との一致が困難になり、かえって混乱する可能性も高いのです。

ワクチン証明との整合性

旧姓併記を諦め、改姓後の姓でパスポートを更新した知人は、後日、黄熱病の国際予防接種証明書(イエローカード)を新パスポートの記載名と一致させるために再取得していました。黄熱病の国際予防接種証明書は以前は10年間の有効期限が定められていましたが、2016年より生涯有効に改められました。そのため、取り直すことを想定しておらず、病院に行き説明する手間もかかり、費用もかかったということです。しかし結果的にパスポートと一致した証明書を取得できたので、パスポートセンターの窓口職員の助言に従ったことが正解だったといえそうです。

パスポートに旧姓併記をしていた場合、国際予防接種証明書の記載名を、パスポートの印字に合わせた旧姓併記にするか、ICチップに合わせた新姓のみにするべきか悩むことになっていたと思います。

同じことは、より広い地域での入国の際に求められるCOVID-19のワクチンパスポートについてもいえます。

日本においてはCOVID-19のワクチンは個人番号によって管理されていることにより、さらに複雑な問題になることもあります。

電子接種証明書は、パスポート上に旧姓・別姓・別名併記がある場合は発行できず、紙版での取得が必要となります。

また、

デジタル庁ウェブサイトQ&Aには以下の記載があります。

婚姻等により姓が変わりました。マイナンバーカードまたはパスポートの姓の表記が旧姓のまま更新していない場合、接種証明書を発行することはできますか。

接種証明書における氏名の表記はマイナンバーカード及びパスポートの表記と同一となります。氏名に変更があった場合は、マイナンバーカード及びパスポートの氏名の表記を更新後に発行してください。

最終更新日:2021年12月13日

つまり、マイナンバーカードとパスポートとで、姓の表記が一致していることが前提とされているのです。そのため、マイナンバーカードは旧姓併記、パスポートは新姓のみ、などの使い分けをしている場合には、市区町村によりなんらかの説明が求められたり、追加の書類が必要になることも考えられます。

今のところ、身分証明書の旧姓併記対応は、一部の利便性はありつつも、研究者たちの改姓による不自由の画期的解決法となるには至っていないようです。

[文責:小川絵美子(日本学術研究会特別研究員RPD)]

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