海外でポスドクをしよう―滞在編(2)

博士の日常
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 みなさまこんにちは。まだ新年の気分が抜け切れていませんが、早くも1ヶ月が経ちましたね。実は、今年の2月1日は旧暦の元旦にあたりますので、ある意味まだまだお正月です。

 そんな中でご紹介する海外ポスドク滞在編ですが、「外国人」として海外ポスドク赴任する際の初期の話をしたいと思います。

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あっさりすぎる溶け込み

 筆者が赴任したのはオーストラリアの某有名大学でしたが、組織規模が大きく、学生も教員も職員もたくさん在籍しているところでした。人事異動は必ずしも学年・学期のスタートに合わせて行われるわけではなく、どんなタイミングでも誰かが加入したり離脱したりしているようでした。

 そのような文化もあってか、筆者の到来は、水面にまかれた塩のように、スッと溶け込んだイメージでした。受け入れ先の教員に挨拶し、学部の人事手続きを進めてくれた職員さんに会い、書類仕事を進めたら、後は個室の研究室を与えられ、粛々と仕事がスタートするだけでした。あっさりしすぎてやや拍子抜けますが、イベントが少ない状態の方が穏やかな気持ちでスタートを切れるかもしれません。

自分からアプローチするためには

 一方では、日本の職場ではよくある「みんなの前でのご紹介/お披露目」がないままスタートし、各々が仕事を進行していき、「場」を共有している感覚もあまりありません。そのため、新入りの自分の存在がどの範囲に知られているか、どうやって他の方と知り合いになればいいかについて、うまく掴み切れない部分もあります。例えば、廊下ですれ違う人に対して、挨拶をするべきかどうかに戸惑うことがあります。

 個性の問題もありますが、文化的背景から考えても、わたしたちは自己主張をすることがそこまで得意ではないことが多いです。そのため、外向的な同僚が進んでアプローチしてくれるならすんなりと仲良くなれますが、自分から積極的にアプローチしないといけないとなると、少しハードルが高くなるかもしれません。そのハードルの乗り越え方は、最終的には個々人で探し出すしかありませんが、筆者の観点から少しだけ助言をしてみましょう。

 まずは、アイコンタクトを恐れないことです。

 日本と比べると、多くの文化の方がアイコンタクトを頻繁に行います。目があった時に視線を逸らしてしまうと、コミュニケーションの取りにくい相手だと思われがちですし、場合によっては友好的ではないと思われることもあります。

 無理をする必要はありませんが、他の方と同じ場にいるとき、なるべく相手の視線に答えるように軽く視線を合わせて、にっこり微笑んでみてください。多くの場合、相手も友好的なサインを返してくれます。そこから会話が生まれることも多いです。

 どうしてもアイコンタクトがぎこちないと感じるなら、相手の鼻の先や、眉の間など、目の周りのパーツに軽く視線を合わせてみるのも良いかもしれません。

 次に、会話のネタをあらかじめいくつか考えておくと、話が進みやすくなります。

 「初めまして」の後の会話の方向は、実はそんなにバリエーション豊富ではありません。自分の名前と出身の紹介、鉄板の天気ネタや食べ物ネタ、そして自分の研究についての30秒トーク…外国語を使った会話に緊張してしまいそうなら、あらかじめ「こういう話題になったらこういう話をしよう」とイメージトレーニングしてみるのは効果的だと思います。

 特に自分の研究についての30秒〜1分程度の軽いトークは、自分の研究者としてのアイデンティティを相手に認識させるのに非常に有効です。それによって相手の話を引き出すことができれば、互いについてよりよく知ることにもつながりますよね。

 また、相手の興味を引きやすいよう、覚えられやすいように内容を工夫することも効果的です。

例えば日本人の名前は音節数が多いことがしばしばありますが、英語名に慣れている方にとっては覚えにくいかもしれません。そのため、自己紹介の際に、ニックネームまたはエピソードも一緒に紹介すると、より覚えられやすいです。たとえば「Masahito」という名前は記憶しにくいですが、「Masaと呼んでいいよ」と短縮して紹介するとすぐに覚えてもらえます。もしくは、「昔の天皇(後白河天皇)と同じ発音だよ」というエピソードを添えると、後々再会した時には「Empireと同じ名前の人だ」とすぐに思い出してもらえるかもしれません。

「外国人」という長所の活かし方

 外国という場に私たちが飛び込むわけなのですが、逆に言えば向こうにとっても外国人を迎え入れることになります。欧米の有名大学では世界各国からの研究者や学生を受け入れていますので、さほどめずらしがられることもありませんが、少なくとも「違うところから来た人」としては認識されるのでしょう。それに対して全ての人が一律に良い態度を取る保証はありませんが、ほとんどの人はオープンで紳士的な態度で接してくれますし、適度に好奇心も持ってくれます。

 その好奇心をベースとして交流を展開する、そして自分も相手や相手の文化に対して適度に「好奇心・興味」を示すと、初期のコミュニケーションはうまくいきやすいでしょう。

 好奇心の向き先はさまざまあります。食や酒に関する話などの生活の話題、音楽・アートなどの趣味の領域、歴史の事件、研究風土や研究の進め方、人間関係のあり方、政治・経済的な情勢など幅広い話が会話の中に登場することがあります。これら全ての話題について熟知する必要はありませんが、日頃少しだけこれら関連のトピックに意識を向けるだけでも、十分興味を持ってもらえる情報を仕入れることができます。

 特にここで注意したい点は、ありきたりの「文化」の話よりもう一歩踏み込んだ話が期待されていることが多いことです。なぜなら、外国人が珍しくない存在である環境では、いわゆるステレオタイプ的な情報は、もう十分すぎるほどありふれているからです。だから、少しだけマニアックな話、日本の中でもローカルに特有な話、俗説的なイメージに反する話のほうが、より期待されます。

 例えば「日本ではお米をよく食べている」ということを語っても、おそらく何の新鮮さもありません。しかし、「昔では北海道のお米はあまり人気がなかったが、気候温暖化によって北海道米の味が改善されて人気が出てきた」、「おいしいお米を炊くためにはこの小技が効く」、「日本酒を作るためのお米と食用のお米の違いがどこにあるか」などの、日本に住んでいない限りなかなか知ることのできない情報を語ると、興味を惹きつけることは間違いありません。

 また、欧米の人々、とくに知識層の中には政治的トピックや社会問題に関心を持っている人が多いです。日本では同僚間で政治の話をするのは野暮な感じだと思われることもあるかもしれませんが、欧米では逆に政治について何も知らない・考えたことがないと知られると驚かれます。教養程度の話にはついていけるように、日本の現状を把握しておくのもよいでしょう。

トラブルの対応は堂々としましょう

 文化もシステムも違う土地で仕事を始めることになると、多少なりともトラブルに出会うことがあるのでしょう。事務手続きのミスや、情報伝達の不十分さ、同僚や学生との人間付き合いの問題など、さまざまな可能性があります。そういう時はストレスが溜まりますし、異国の地に自分がポツンと放り出されたような、虚しい気持ちにもなるかもしれません。こういう時こそ、自助と救助要請をうまく行って、トラブル対応をしたいところですよね。

 以下ではいくつかのアドバイスを提供しますが、最大のアドバイスは、「堂々と権利を主張してください」ということです。トラブルに巻き込まれたり、ハラスメントを受けたりすること自体は、自分が間違っていることを意味しません。平等に扱われること、自分という個人や文化的背景を理解してもらうことは、当然の権利であるので、それを主張することに後ろめたさを感じてはなりません。

 まずは、どこに助けを求めることができるかを確認しましょう。トラブルの原因を冷静に分析することができる状態であるならそれに越したことはありませんが、全てがこんがらがっている状況や、自分の分析ではどうにもならない場合は、他者の力を借りる方が効果的です。この場合、できれば自分の状況や文化的背景も理解できる相手に相談したいところだと思います。

 オープンに話ができる上司や同僚、友達がいるのであれば、まずはその方々に相談してみましょう。筆者の経験では、欧米の文化の中で生きる方々では、個人的な悩みを打ち明けたり、他者の悩みを聞いてあげたりすることに対して、さほど抵抗感を感じません。「ちょっと悩んでいることがあるのだけど、話を聞いてもらってもいい?」とアプローチすると、ほとんどの方は快く応えてくれます。悩んでいる素振りを見せると積極的に「大丈夫?話を聞こうか?」と聞いてくれる人もたくさんいます。そのため、自分の中にある自己開示に関するハードルを、少し下げていっても大丈夫でしょう。

 メンタルにしんどさを感じたら、迷わず大学のカウンセリングセンターなどに連絡しましょう。一般的には、欧米の大学はメンタル方面のサポートは充実で、理解も充分にあります。「ちょっと話してみたい」程度でも大丈夫ですので、遠慮なくサービスを利用するとよいでしょう。外国語でうまく伝えられるかどうかが気になるのであれば、自分の文化に理解のあるカウンセラーを希望することを伝えることや、場合によっては外部のカウンセラーを紹介してもらうこともできます。移民が多い町であればあるほど、海外にルーツを持つカウンセラーの選択肢も多いので、良い相手にサポートしてもらえると思います。

 ハラスメントを受けていると感じているなら、大学のハラスメント委員会などに相談しても良いと思います。日本の大学や企業のハラスメント委員会の一部に対して、有効性を疑う意見も時々見聞きしますが、その点において、海外の組織はもう少し真剣に取り組んでいる印象があります。また、民族・性別などを起因としたハラスメントには特に敏感に取り組んでいますので、良いサポートを得ることができるかもしれません。その際には、感情的になりすぎず、冷静に交流し、事実や証拠をなるべく提示できるようにすると、スムーズにいきやすいかもしれません。

 さまざまな方面からの助けを得て、トラブルが解決されることができることは多いです。もちろん、自分の権利を主張するのは重要である一方、意固地になるのはよくありません。自分に誤解があったりコミュニケーションが不十分だったりしていることがわかったら、その時は潔く認めましょう。

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[文責・LY / 博士(文学)]

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