ポスドクの保活事情 ④行政が理解できる書類の重要性

博士の日常

ポイント加算にはともかく書類

第一子のときの保活では、何度か役所に足を運び、担当者に相談という形でなんとかポスドクの身分を理解してもらおうと試みました。

複雑な事情は口頭での説明がわかりやすく、関係性を築いていくことで理解されるのではないかと考えていたのです。

しかし行政のシステムに乗る限りは、書類を揃えることのほうが重要だというのが、2回目の申請で活かされた教訓です。

そして、「ポスドクは学生の扱いになるのか、自営業者の扱いになるのか、パートタイムの扱いになるのか」といった質問、相談をして書類を揃えるのではなく、2回目の申請時には、はじめから加点が一番高い「外勤フルタイム」の扱いを想定して書類を揃えました。問い合わせは、「外勤フルタイムとみなされるためには、何が必要か」という観点でいきました。

こういったときの説明につかえるよう、学振からは制度概要をA4サイズ一枚にまとめた公式PDFが公開されています。

特別研究員様式集のページに小さなリンクがあります。

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目立たないところにあるのでリンクを見つけるのは少々困難なのですが、使い勝手のある重要な書類です。
「特別研究員制度の概要」

2回目の申請時には、口頭説明の代わりにこれを印刷して提出しました。これを役所が正式な書類として受け付けてくれるかどうかが重要なポイントになります。

わたしが申し込みをした自治体では、「雇用関係がない」「実労働時間が証明されない」ということがネックになったのですが、この「特別研究員制度の概要」のなかに

※研究奨励金は、税法上は給与所得として扱われる。

という文言があったことで「就労相当」とみなされる根拠を強化してくれたようです。

(やはり「給与」とみなされるか否かは重要視されがちなようで、ほかの方の体験談では「給与所得の源泉徴収票」が証明に役に立ったというお話もあります。学振の研究奨励金は行政書類上は「給与」という表記になります)

そして、指定様式の「就労証明書」を、学振のほか、非常勤講師をしている大学にも記入をお願いしました。学振の書類には、勤務場所、就労時間は記入されないものの、支給額を明記してもらうことで就労のエビデンスとなる可能性が増します。

(研究スケジュールを作成し、所属機関の印鑑をもらうことで勤務地や時間の証明として認められたというケースもあるということです)

我が家が申し込んだ自治体では、自営業者用、学生用のフォーマットとしてスケジュール表の様式が指定されているので、そちらを作成しました。所属機関からの公印をもらえれば公式の書類として効力を増したと思うのですが、残念ながらわたしの所属先では対応してもらえなかったため、前年度の確定申告書類の控えや給与明細、最近執筆した論文、進行中の出版社とのやりとりのメールも、就労の根拠書類として添付することにしました。注意すべきことは、これはあくまで「就労証明書」の補足資料であり、基準指数の評価が低くなる「自営業者」の枠での申請だと受け取られないようにすることです。

そのため、非常勤講師をしている大学からの「就労証明書」は、実績のみの記載としてもらい、あえて次年度の採用予定の証明は頼みませんでした。

大学での副業の書類があると、かえって学振がフルタイム相当であるという評価を妨げるかもしれないと考えたためです。

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学振特別研究員には産休や育休はない

2回目の申請での最も大きな勝因は、「学振特別研究員採用中断(研究再開準備支援期間)」を「育休中」ではなく、「時短勤務中」と読み替えてもらえたことだと思っています。

学振研究員には、「出産育児のための採用中断延長制度」というものがあります。文字通り、出産や育児によって研究専念義務が十分に果たせない状態にある場合、採用期間を中断し、その分の期間を延長できるという制度です。

一見、一般的な育休・産休のようでもありますが、出産手当、育児手当が支給されないことからも別の制度だと考えるほうが妥当です。また、「採用の中断中であっても特別研究員の資格は有し、研究専念義務の免除を除き遵守事項等は免除されるものではありません」と手引書にも明記されています。

認可のポイント制度では、「育休中」は「現在就労中」よりも加点が低くなります。復帰を目指して保育先確保を希望する家庭よりも、他の保育施設を利用しながらすでに復帰している家庭のほうが、優先度が高く評価されるのです。

そのため、学振の採用中断期間が「育休」とみなされるか、「すでに就労中」とみなされるかで調整指数のポイントに差がつくわけです。

また、通常、外勤の場合は、一日あたりの勤務時間や週あたりの勤務日数に規定があり、足りないと減点されていきます。しかし、勤務先の規定による育児のための時短勤務をしている場合には、フルタイム相当とみなされることになっています。

(もちろん自治体によって基準は異なるのですが、子どもが3才になるまで時短勤務できる権利は法律で認められているため、おそらくほかの自治体でも、時短勤務を不利に評価するところは少ないのではないでしょうか)

学振の採用中断(研究再開準備支援)期間が、時短勤務と同等と判断されることにより、ネックになっていたシビアな勤務実態証明が免除される形になり、「外勤フルタイム」相当のポイントがついたというわけです。

前回、第一子のときの申請の際には、翌年度からの学振研究員の採用が内定している状態での申込みだったので、「就労中」よりも保育の必要性の低い「採用内定」という評価にしかならなかったはずなのに対し、2回目の第二子の申請では、すでに採用期間中にあり、直近数か月の給与支給の実績が証明できたため、「就労中」という最もポイントの高い評価になったのではないかと思います。

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[文責・子育てポスドクさん]

<筆者について>
人文科学系のポスドク。大学院博士課程を単位取得満期退学後、任期付きポストと非常勤講師を兼任しつつ研究を続ける。 精神的不健康傾向の会社員のパートナーと、特撮大好きな幼稚園年長の娘、頑なに音声言語を話そうとせずにこの頃ハンドサインの語彙を増やしている一歳半の息子との4人暮らし。

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