ポスドクの保活事情 ⑧認可外園と研究復帰のタイミング

博士の日常

復帰より早いタイミングでの保育開始

当初、非常勤開始に合わせて9月入園を希望していたものの、その後園からの要望により実際の入園月は8月に前倒すことになりました。

現場の園長先生とは年度途中からの入園の約束をしていたのですが、認可外保育園を運営する本部から方針の転換があり、急に定員の確保が難しくなったというのです。

認可外園ではありましたが、運営費の一部は自治体の補助金を受けているタイプの保育所だったため、行政とのやり取りの中で複雑な問題が生じることがあったようです。

隣の自治体にも系列園があるのですが、その自治体では、指定の基準を満たしている認可外保育施設の利用者に対し、認可園との保育料の差額分を全額助成するという措置をとっています。そのため、利用者の選考や定員の数にも自治体からの干渉が入るようで、その影響から系列園でも個別事情に融通をきかせることが難しくなったようです。

わたしが直接話せたのは園長であり、本部からのお達しがどのようなものだったのか、具体的には説明できないようでした。しかし察するに、「弾力化」によって広がった定員分については、期を置かずにすぐに枠を埋めたい。それも待機児童(すでに認可園に申し込みをしている世帯の幼児)を優先して受け入れたい、ということのようでした。

園長からの最初の連絡では「内定を取り消したい」というお話でしたが、その後食い下がり、なんとか入園を前倒すことで本部を説得していただきました。

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認可園であれば、入園が決まったら保護者はすぐに就労復帰する必要があります。そして1ヶ月以内に復帰した証明を提出しなければ退園になってしまいます。

しかし、認可外園ではそこまで厳密な縛りはないので、契約を締結し保育料を収めていれば、極端な話、子どもを実際には預けていなくても問題になることはありません。

想定外の前倒し入園でしたが、結果的にはこれが色々な意味で良い選択となりました。

乳児は集団保育に慣れるまで体調を壊しやすいことがよく知られていますが、ご多分に漏れず、我が子も登園3日目にして感染性の結膜炎を発症。しばらく登園できなくなってしまいました。そして、眼科医から登園許可が出た時にはすでに8月も半ば。

しかし、ちょうどお盆休みで登園をお休みしている園児も多く、保育士さんたちに余裕がある時期に「慣らし保育(慣れ保育)」をやり直すことができたので、9月の後期授業が始まる頃には安心して8時間フルで保育をお願いできる状態になっていました。

わたしの場合は母乳の関係でも、あらかじめ認可外での慣らし保育に時間をかけられたのはよかったです。すでに離乳食もはじめており、哺乳瓶の粉ミルクにも十分慣らしていましたが、母乳を飲まない子どもよりも、飲まれない母体のほうが慣れるための調整が必要でした。

預けはじめの頃は、子どもの体調の変化による呼び出しもありましたが、母体の都合でも契約の時間より早めにお迎えに行く日がありました。強い張りを感じたり、シコリを見つけたり、乳腺炎の兆候があるときは、予防法として、温めるのがいい、冷やすのがいい、絞るべき、絞り過ぎはよくないなど、何が正解なのかよくわからない民間療法がいわれています。しかし子どもに直接吸い取ってもらえるなら、それに越したことはありません。

認可保育園の場合は、入園と同時に一日8時間勤務の完全な職務復帰が前提となるので、親の方の体調に合わせて保育時間を調整するなどという使い方は不可能だったはずです。認可外だからできた柔軟な対応のおかげで、子どもだけでなく、わたし自身も新しい生活リズムに無理なく慣れていくことができました。

また、上の子の幼稚園は夏休みだったので、慣らし保育の期間に2箇所の送迎でアタフタすることなく、親子ともに徐々に新しい環境に慣れていくことができましたし、久しぶりに上の子とふたりだけで外出する(といっても近所のファミレスで食事する程度ですが)時間も作れたので、2度目の出産以来我慢を強いることが多かった上の子を、つかの間ですが復帰前に甘えさせてあげることができました。自分の復帰準備と下の子のことで精一杯でなかなか手が回らないのですが、上の子のケアも重要です。

本格的な復帰前に一ヶ月の助走期間をとれたことは、本当に有意義でした。

月齢が小さいうちはできるだけ自宅保育をしたほうがいいのではないか?
家で親子で過ごす時間をできるだけ長くとったほうがいいのではないか?

子どもが幼いということでこういう思いがあり、当初は復帰のギリギリまで保育の開始をしない考えでした。しかし、こうして余裕をもって動けたほうが、子どものためにも結果的にはよかったと思っています。

大学の授業は第1週から始まる予定ではなかったとはいえ、復帰の月と登園開始月が全く同じスタートでは、とても身体がもたなかったといまでは思います。

認可園の場合は、入園が決まったらすぐに就労復帰することが大前提なので、復帰に向けた準備期間として保育を使うことはできません。実質2週間程度ですが、復帰前の贅沢な時間をすごせたことは認可外ならではでした。

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入園選考で重要となる「保育指数」

詳しくは別記事で書きましたが、認可外園の利用は、翌年度の認可園への申込みの際にも有意に働きました。

認可園への申請時、非常勤講師の就労証明と学振の採用証明だけでは、証明が不十分とされかねない状態でしたが、認可外園での保育実績が、就労実態の証明を補強してくれたのです。

そして認可外園での保育実績は、認可園への入園選考で自治体が利用家庭ごとに必要度を判定する点数「保育指数」の加点対象になるのですが、その利用期間についても加点数が分けられています。

「保育指数」の規定は自治体ごと、年度ごとに変化します。例えば、わたしが申し込みをした自治体では、一斉申し込みの時点で3ヶ月以上、認可外保育施設を利用している場合は加点されます。

わたしは見落としていたのですが、認可園への一斉申し込みは前年度の11月時点で3ヶ月以上の保育所利用実績の証明書類が必要なのです。ほとんど病欠と慣らし保育で終わってしまった8月でしたが、その1ヶ月の利用があったことで保育指数が1点増えていました。

ちなみに認可園への申込みを見据えて認可外園に入園するということは、むしろ一般的な動き方だそうです。3ヶ月以上在園した園児から「弾力化」の対象となり、認可園に転園していくケースがあるわけですから、認可外園の在園児は低月齢が多くなりがちです。特に進級する園児は少ないので、1才児、2才児クラスでの保育先を探す際には、持ち上がりで枠が埋まってしまう認可よりも募集定員が多い可能性があります。

年度末ギリギリや年度末に急に欠員募集が出ることもあるので、募集がない場合でも諦めずにこまめに問い合わせることも時には有効です。上の子の2才児クラスへの入園がかなったのはまさにこのケースでした。3月27日に認可外園から電話があり、「認可に繰り上がり入園が決まった園児が転出するので欠員が出た。もしほかに決まっていなければ面接に来てほしい」との連絡を受け、翌日親子で面接、その場で契約書にサインをしたのを覚えています。

本当にギリギリだったので、4月から採用が内定していた学振や受け入れ研究機関にも心配や迷惑をかけました。学振研究員RPDは、採用開始日を申請者が四半期ごと(1月、4月、7月、10月)に選択することができる制度があります。保育が確保できなかったことを考え、採用開始日を後ろが押す手続きについても同時に準備をしていたので、かなりバタバタしました。

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[文責・子育てポスドクさん]

<筆者について>
人文科学系のポスドク。大学院博士課程を単位取得満期退学後、任期付きポストと非常勤講師を兼任しつつ研究を続ける。 精神的不健康傾向の会社員のパートナーと、特撮大好きな幼稚園年長の娘、頑なに音声言語を話そうとせずにこの頃ハンドサインの語彙を増やしている一歳半の息子との4人暮らし。

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