【フジボウ愛媛株式会社】多様な人財が支える材料開発のグローバルトップ ―外国人博士が語るフジボウの魅力―

インタビュー

「AJ出張版」は、株式会社アカリクが発行する「大学院生・研究者のためのキャリアマガジン Acaric Journal」の過去の掲載記事や、WEB限定の新鮮な記事をお送りするカテゴリです。今回はvol.6の掲載記事をお届けします。

富士紡ホールディングス株式会社は、高度な有機材料技術を用いた製品を製造し、超精密加工用研磨材分野ではグローバルトップのポジションを獲得しています。本インタビューでは博士課程を修了しフジボウ愛媛株式会社の技術開発部に入社して間もないH氏と、同じく博士号を持つ上長のT氏に同席していただき、フジボウ愛媛の魅力について伺いました。

― Hさんは、大学院ではどのような研究テーマに取り組まれていたのでしょうか

H 主に太陽電池に関する研究を行っていました。具体的には、太陽電池の光が入射する表面の屈折率を下げることで、反射を抑えてエネルギーへの変換効率を上げる「反射防止膜」の研究です。また、太陽電池が劣化してしまうPID現象から回復までの時間を短縮する研究や、自動車や太陽電池の表面のガラスを改質して、水やイオンが付着してできる白い鱗状痕を除去・防止する研究などを行っていました。

― 太陽電池に興味を持ったきっかけを教えてください

H 私の出身地であるミャンマーは、深刻なエネルギー問題を抱えています。24時間安定して電気が使えるようになったのは2010年頃で、現在でも全域での電力の供給は安定していません。

 2015年頃に、「ソーラー・インパルス」という太陽エネルギーを動力源とした飛行機が世界を1周するプロジェクトが進行していました。偶然、私が住んでいた地域が飛行機の一時補給・休憩地点になったことがきっかけで、太陽電池に興味を持ちました。しかし、ミャンマーには太陽光エネルギーの開発について研究できる環境が整っていませんでした。そこで、私が通っていた大学の留学プログラムを利用して岐阜大学に留学することにしたのです。

― 大学院での研究はいかがでしたか

H 研究室の異動があったり、指導教員が忙しくてあまり指導が受けられない時期があったりして、大変だと感じることもありました。しかし、自分のやりたい研究ができる環境だったので、とても楽しかったです。

 博士課程修了後は、約1年間ポスドクとして研究を続けました。複数の大学と海外の石油を扱う企業との共同プロジェクトで、アンモニアから高純度水素を製成するための水素分離膜の実験を担当しました。当初はそのままプロジェクトを続けていく予定でしたが、もっと安定して研究活動を行いたいと考えていました。

 周囲の留学生は、アカデミックな進路を選択する方が多く、私もそうした内定を頂いていたので、民間企業で研究するつもりはありませんでした。しかし、富士紡ホールディングス人事部の豊田さんや、技術開発の担当の方と面談を重ねるうちに、ここで研究したいという気持ちが強くなり、最後には入社することを決めました。もちろん、日本に来てからずっと過ごしてきた岐阜を離れることに不安もありました。母に相談してみたところ「ミャンマー以外ならどこに行っても一緒でしょ」と言われましたし、社内を見学させていただいたこともあって安心できたので、新しい土地に行って挑戦することを決意しました。

― Hさんの現在の業務内容と、1日のスケジュールを教えてください

H 富士紡ホールディングスの子会社であるフジボウ愛媛株式会社で超精密加工用研磨材の研究開発を行っています。弊社は、半導体などの様々な部品を精密に研磨するための材料の製造と販売をしています。私は、主に材料の開発、原料の分析、お客様の対応などを行っています。

 朝は7時45分頃に出社して朝礼などを行い、8時から業務が始まります。主に午前中はメールチェックや、前日に考えたスケジュールをもとに業務を進めます。12時からお昼休憩をとり、12時50分から16時30分まで午後の業務を行います。ほとんど定時に退社しますが、緊急で対応が必要な場合などは、1時間程度残業することもあります。帰宅後は、映画や音楽を鑑賞して過ごし、週末は料理をしています。入社して2か月程は、毎週のように社員の誰かが食事に誘ってくれて、(感染症対策を考えながら)少人数でメンバーが入れ替わりながら食事に行っていました。他の同僚は、休日はサイクリングやテニス、キャンプといった趣味を充実させているようです。

T 最近はコロナ禍の影響もあり、部署全体での食事や飲み会があまり開催できていなかったのですが、決められた少人数を守りながら、個人的に集まって楽しんでいるようです。皆さん、充実したプライベートを送っているようで羨ましいです。

― 印象に残っている仕事のエピソードはありますか

H 特に印象に残っているのは、一度に大量の薬品を扱ったことです。大学で薬品を扱う際は多くても数ml程でしたが、弊社では1つのサンプルを作るのに少なくともその数百倍を使用するので、最初はその量に驚きました。大学での研究と企業の研究では、スケールが大きく異なることを日々実感しています。

 最近は、お客様からのご指摘に対して、その問題が発生する原因をチームで調査しています。自社の分析手段や分析装置を用いながら解決すべき課題を抽出する中で、壁に直面することもありますが、その分挑戦しているという実感があります。

T これは、今まさに進行中の業務なのですが、短い期間で新しい解決策を提示しなければならない状況下で、チームで取り組んでいます。Hさんには、その一部を担ってもらっており、大変だと思いますが、そのおかげで分かってきたこともあるので助かっています。

― 博士課程での経験は、どのように業務に活きると思いますか

H 大学院の指導教員が、「博士号は運転免許証のようなもの」だと仰っていました。運転免許を取ると、様々な車種を運転してみたいと思うように、自分の分野だけではなく他の分野でも研究を活かせないかと視野を広げることが大事です。また、博士課程では自分自身で研究のテーマや進め方を考えて、失敗しながらも研究成果を出すことを経験します。このような学びは、今後の社会人人生で十分に活かされると思っています。

T 一般的には、修士課程までは与えられた研究テーマに取り組みながら、分からないことや進め方は先生からの指示に従うことが多いと思います。一方、博士課程では、自分で研究テーマを設定し、研究計画を立てて実験を行い、その結果を考察して物事を進めていく必要があります。このプロセスは企業での仕事にも共通すると思っています。

 Hさんは入社してまだ半年程ですから、分からないことやできないことがあるのは当然のことで、これらは時間が解決してくれると思います。Hさんに限らず博士号を持っている方は、仕事を与えられるとまずは自分で考えて、真面目に取り組む姿勢を持っているので、今後もその調子で頑張って欲しいです。

― 読者にメッセージをお願いします

T 学位を取るまでは、どんなことに挑戦しても、何度失敗しても許されるので積極的に活動してみてください。もちろん、企業に入ってから失敗しても構わないのですが、学生の頃と異なりお金や時間の制約が関わってきます。また、自分で考えて自分で動いてモノを作ってみたいと思う方であれば、弊社にマッチすると思いますので、興味がある方は是非検討してみてください。

H 学生の皆さまは、進路を選択するうえで、自分の研究分野にマッチしているかどうかを気にされると思います。特に、博士課程の方はその点を心配されて、自分の分野以外を第1志望として選ぶことは稀だと思います。しかし、弊社には様々な分野での経験とスキルを活かすことができる環境があると実感しています。

 もし、なにか気になることがあれば、人事部の豊田さんや竹内さんに連絡してみてください。弊社の人事の方々は相談がしやすく、私も就職活動の際に助けてもらいました。また、私の後輩が志望企業の人事に送るメールを長い時間をかけて作成していましたが、長い間悩んでいても仕方ないので、気負わずに行動してみてください。

※本記事は富士紡ホールディングス株式会社の協力のもと、作成いたしました。

プロフィール(取材当時)

T 氏

フジボウ愛媛株式会社 技術開発部技術開発課課長。2011年入社。1982年生まれ。京都大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了。博士(理学)。

H 氏

フジボウ愛媛株式会社 技術開発部技術開発課。2022年入社。1993年生まれ。ミャンマー出身。岐阜大学大学院工学研究科環境エネルギーシステム専攻博士課程修了。博士(工学)。

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