【青山学院大学 伊藤雄一氏】アカリク NICE EDUCATION 第2回 青山学院大学理工学部 伊藤先生の場合(2)

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ー あまり計画的ではなく、ノリでやってみようか、という感じで始まったのですね

 ノリですね。今はテンプレートができていて、次回は誰さんで、と言うようにはしているのですが、最初はそんな感じではなかったです。こんなに長く続くと思っていなかったので、今は止めどきが分からない感じです。普通の大学の講義は15コマで終わりですが、明日(取材日2021年6月3日の翌日)で17回目になります。同じような話ばかりになってもつまらない、などと考えると、今後どうするのかは考えどころです。ただ、毎回ゲストの方が違っていて、その範囲も広がってきたので我々と視聴者さんが楽しめる限りは続けたいと思っています。

ー 今はオンデマンドで講義を録画する先生も増えていますが、こちらのとの違いはありますか

 講義だと反応が見えなくて、ウケたのかどうかも分からないのが辛いですね。あと、凝ったオンデマンド動画を作ってYouTubeに上げても、全然見られていないですし…後で学生に聞くと、「2倍速で見ました」と言われて、悲しくなったりします。

 その点、YouTubeライブはリアルタイムに視聴者さんから反応が返ってくるので楽しいです。ただ出演されるゲストの方には、映像が残るので発言には注意するようにお伝えするようにしています。たまにセンシティブな内容もありますから、そこだけは注意してくださいと言っています。結局、オンデマンドの難しさもあり、ライブの難しさもあります。苦手だから、と何人かゲスト出演をお断りされたこともあります。でもやっぱりインタラクティブなメディアは楽しいです。そう考えるとオンサイトの授業ってインタラクティブだったんだなぁと思います。

ー 研究教育におけるこだわりについてお聞きしたいです

 基本的には「おもろいことをやりなさい」なのですよね。「100個アイデアを出したら101個目のアイディアを使え、やって楽しくない研究はせんといてくれ」というのが基本です。あと、「1回やることが決まったなら、どうせやるならとことんまでやってください、嫌々やらないでね」という教育方針です。研究は自分で道を切り拓いていくことで、一生の中でチャレンジできる機会はほとんどないのだから、この数年間はとことんやってみて欲しいと思っています。

ー 学生の皆さんは博士課程まで進まれるのでしょうか

 情報科学の学生は現状超売り手市場で、博士まで行けばいいと思う人がいても、その前に良いところに就職が決まります。それをひっくり返してまで進学を勧めるのは難しい状況です。博士に行ってもどこにでも就職できると思うのですが、学生からするとそのようなルートは見えづらいと言いますか。博士課程の先輩がいないと、修士課程の院生にとってはその道が想像しづらく、なかなかその道を選択できないようです。

 僕は基本的に博士課程進学をお勧めしていて、「はちげんめっ!」でも、「行けるのであれば、ドクターに行ってみたら」と言っています。青学は、逆に修士に進学する人が3割くらいしかいません。今年は配属された4年生12人のうちの半分程が修士に行くと言っているので、平均よりはだいぶ高いのですが。彼らが良いスパイラルを回してくれることを期待しています。数年に1回、博士課程に進む学生がいたら嬉しいかなと思います。「好きなことをやる」というのが基本方針なので、そういう意味でも博士課程まで行った方がいいと思います。しかしもともと就職希望先がテレビ局やゲーム関係など博士号取得者を積極採用していない業界だと、薦めづらいという事情もあります。ただ、最近はAI関係の企業など、博士号取得者を積極的に採用する企業も増えてきているので期待しています。

ー 学生に求めること、こういうことができるようになってほしいな、と思うことはありますか

 学部と修士と博士で、それぞれ求められることが全く異なります。学部卒の学生は、大学で1番、修士は日本で1番、博士は世界で1番、その分野を知っている人にならないといけないと思っています。そのために必要なことはそれぞれの段階でやってください、というのが基本スタンスです。

 例えば、学部生であれば、わからないポイントがあったときに、自分でその答えを探せるようになる、自分で学び取る力を身につけておいて欲しいです。だからこそ授業があります。

 修士に行くと、研究がメインになってきますので、あるテーマについて自分で解決する力、学部のときに身につけたある科目について深く学ぶ力を拡張して、ある問題について解決する力を得て欲しいです。

 博士は、自分で問題を見つけて、自分で解決してください。この場合、大学の先生も問題の答えを持っていません。解決法を持っておらず、一緒に考えて道標を示すことしかできないので、大学の先生に期待しすぎず、自分で問題を探したり、問題解決する力を身につけて欲しいです。

ー 就職活動やインターンに対して、どのように感じられますか

 僕は、ヒトは基本的にただ入出力する機械だと考えています。人間は、同じ入力に対して同じ出力でしか返せないのです。ですので、出力を変えるには入力を変える、もしくは、出力に対する入力の回路を変えるしかないのです。そのためには、同じところに閉じこもってないで、外に出ていろいろな情報を吸収するしかないと思います。

 理系の学生は自分の分野に強くても、ほかの分野の話を振ってみたときに、答えられない人が多い印象があります。グラフで表すと、1箇所だけがとがっている状態です。聞いてみるとあまり本を読んだことがないとか。文理問わず、学生はいろいろな知識を取り込む知的好奇心が溢れていると思っています。大学院に来るような方は、1つのことを見つめ続ける人が多いので、その対象を増やして欲しいというのが僕の意見です。ですので、そのための機会として、就職活動やインターンもありますが、理系であれば文系の研究に触れたり、美術館や博物館に行ってみたり、それこそ小説にはまって本を読みふける、そのような幅広い入力が大事だと思っています。

ー 研究しかやってはいけないという先生もいらっしゃいますね

 そんなのはダメですよ。人間として深みを持って欲しいのです。僕らが言ったことに対して、たまに全然違う方向から出力を返してくる人がいますが、やはり尋常じゃない数の本を読んでいたり、分野横断型で哲学にはまっていたりします。感銘を受けたのは、ノーベル賞受賞者で物理学者の南部先生(南部  陽一郎 氏 理論物理学者。シカゴ大学名誉教授、大阪市立大学名誉教授・特別栄誉教授、大阪大学特別栄誉教授。専門は素粒子理論。2008年にノーベル物理学賞受賞。)と、大阪大学元総長で哲学者の鷲田先生が対談された際に、物理学者と哲学者という両極に存在するような分野を専攻している両先生のお話がしっかり噛み合ってたんです。南部先生も学生のときニーチェなどを読みふけっていたそうですので、やはりそういう方々の話は深いです。ですから、自分の分野だけではなく、様々な分野の話を入力してほしいです。動画でもYouTubeでもAmazonプライムの映画でもいいので、どんどん入力を入れて、出力を変えていってください。

ー 大学生含めてこれから研究をやっていきたい方に対してメッセージをお願いします

 今は、コロナ禍の影響でネガティブになりがちです。学生だったら、新型コロナウイルスの影響で実験ができません、など。僕は逆で、こういうときだからこそ面白い研究ができるのではないかと思うのです。例えば、僕らの分野ですと、テレワークで相手の顔が見えないから雰囲気がわからないという問題に対して、どうすれば雰囲気が伝わるのか考えるとか。友達ができないというのも、オンラインの友達を作るにはどうすればいいか、という動きができるので、今をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉えて新しいことを考える、というのをぜひ行ってみて欲しいです。この状況だからこそ「はちげんめっ!」が始まりましたし。

ー 2021年の4月から青学で研究室をスタートされましたが、コロナ禍で新しいコミュニティを作り上げる際の苦労などはありましたか

 学生のうち何人かは、来る前から僕のことを知ってくれていました。SNSやYouTubeの力はすごいなと実感しました。YouTubeには、自分の動画だけでなく、はなおでんがんの動画にも少し出ていたので、それで僕のことを知っている学生がいたのです。研究者はもっとSNSをうまく活用した方がいい、というのは真実かもしれません。

 今は、YouTubeをもっとうまく使えないかと考えています。自分の研究分野の裾野を広げるためにも、若い人に興味を持ってもらわなければいけません。YouTubeを使って、自分の研究が世の中に出ていく身近なものとして捉えられるような企画をやりたいと思っています。そのようなSNSやYouTubeなどを利用したような企画を立ち上げて、学外から青学の伊藤研に行きたいという人が生まれるくらい、頑張りたいと思っています。

プロフィール(インタビュー当時

伊藤  雄一 氏

青山学院大学理工学部情報テクノロジー学科 教授。大阪大学大学院情報科学研究科情報システム工学専攻 招へい教授。1975年愛媛県生まれ。2002年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程中退と同時に同研究科助手。同大学院情報科学研究科助教を経て、2008年より大阪大学クリエイティブユニット 准教授。2021年より現職。博士(情報科学)。専門はヒューマンコンピュータインタラクション。

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