【株式会社ティアフォー 加藤真平氏】自動運転技術の民主化へ向けて ―強者に勝つためのオープンソース戦略―(2)

インタビュー

ー なぜ、自動運転のソフトウェアを開発しようと思われたのでしょうか。大学院から研究員時代の研究テーマと、自動運転の関係性はあるのでしょうか。大学院時代でのエピソードや、ご研究内容について簡単にお聞かせください

 大学受験を終えた頃、一冊の本と出会い、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツを知りました。Windowsが爆発的にヒットする前に、10年以上の下積みがあったことを知り、「自分も今から取り組めば、社会にインパクトを与えるものが作れるはずだ」と考え、プログラミングに熱量を注ぐとともに、その世界に魅了されました。卒業後の進路としてマイクロソフトへの就職を希望しましたが、新卒採用が行われないことを知り、研究者としての道を選択しました。米カーネギーメロン大学に研究員として渡米し、そちらで自動運転技術と出会いました。

 自動運転技術によって「クルマが当たり前のように自動で動く姿」に感動しました。クルマが動くというコンセプトは単純であるのに対し、無数の技術が必要であり、まだ誰も実現できておらず、研究の深さに魅力を感じました。世界最先端の自動運転研究に携わると同時に、自らが社会に新しい価値を提供しようとする起業精神にも触れました。自動運転技術による社会課題の解決など、技術による社会貢献を志すとともに、日本の基幹産業たる自動車産業が自動運転領域においても世界をリードするための一翼を担いたいとも考えました。

ー 自動運転ソフトウェアを開発する会社を創業するきっかけは何だったのでしょうか

 帰国後に名古屋大学の准教授として自動運転の研究を進め、Autowareを開発しました。2015年夏に公開したところ、多くの企業から「改良が加えやすく使い勝手もよい」との声が寄せられました。当時、大学の研究室には5名ほどの学生しかおらず、規模を拡大して行く必要を感じ、ティアフォーを創業しました。

 Autowareの強みは、無償公開するオープンソース戦略を取ったことです。すでに(米アルファベット傘下の)ウェイモが相当先に進んでおり、単独開発では追いつけず、勝てない状態でした。成功のロールモデルは、さまざまなコンピューターに使われるOSである、Linuxです。自分が憧れていた世界一のマイクロソフトのWindowsであっても、Linuxにどんどんシェアを奪われていきました。Linuxのようにオープン化することで業界標準を確立しようと考えました。日本のスタートアップがシリコンバレーのような大企業に勝つ方法は、「オープンソース」というアプローチをとるしかなかったのです。ソフトウェアは多くの人に使ってもらえることに価値があります。世界中のエンジニアが使ってくれれば、仲間が増え、自動運転領域のデファクトスタンダードになれると考えました。

ー 社名の由来について教えてください

 自動車業界はOEM(自動車メーカー)を頂点とし、ティア1、ティア2…と呼ばれる下請け、孫請けの部品メーカーがそれを支える業界構造で発展してきました。数万点におよぶ部品が複雑に組み合わされ連携する内燃機関中心のクルマ造りでは、この構造が力を発揮します。一方、部品数が減るEV車やソフトウェアが開発の中心となる新しいクルマ造りにおいては、さまざまな領域から新しい技術を組み合わせ連携させることが求められます。自動運転という新しい時代には、テクノロジーを「民主化」し、誰もがその発展に貢献しながらメリットを享受してほしい。そのような思いが「IV」= Intelligent Vehicle に込められています。

ー 自動運転技術が現在抱える最も大きな課題について、お考えをお聞かせください

 技術開発もさらなる進歩が必要ですが、そのほかに3つの要素があると考えています。

まず「規制」です。日本では、グレーゾーンの状態で国が事業を推進することはないからです。ただ、日本は規制緩和に対する意識がとても高い国で、しっかりと事例を作って主張さえすれば、納得感も生まれ、未来に向けてポジティブな選択をしてくれます。まずは、自動運転に適した規制を作っていけるように、国のサポートを得ることがすべての始まりとなります。

 次に、お金が循環する構造、つまり「ビジネスモデル」です。過疎地で自動運転を実現したくても単純なBtoC、BtoBでは事業が成り立ちません。現在、そのような地域でも道路工事や社会保障などは国が一部負担してくれていますが、自動運転を普及させるには類似した交付金や補助金が必要になってくると思います。地域事業として国が一部負担するほどの価値が自動運転にあるかどうかがポイントになります。事業が立ち上がってお金が循環するようになれば、徐々にBtoCやBtoBのビジネスとしてもスムーズに展開していくのではないかと考えます。

 最後に、「リスクマネジメント」です。技術だけでは、100%の安全は保証できません。100%の安全を目指して技術開発をしても、エラーは必ず起こります。ですからリスクとどう向き合うかが重要で、まず、技術を理解することが大切です。その技術を用いるとどういう環境でどういうリスクが起こり得るのか、シナリオを作れないといけません。次に、膨大なシナリオに対するシミュレーション検証とフィールド試験を徹底的に行います。そうして限定した条件のもとで運用することでリスクを最小化できます。残る極小のリスクについては、運用中の見守り体制であったり、事故発生時の保険を整えたりすることで、いかにして補償を備え、社会受容性を得るかが大事になります。このようにリスクに対する予防と備えのガイドラインをしっかりと作っていけば、自動運転が日常化される未来もそう遠くないのでは、と思っています。

ー 今後、どのような会社でありたいのでしょうか

 東京大学のコンピュータサイエンス分野の准教授が創業したスタートアップは、日本でもっともコンピュータサイエンスに詳しい人間が創業したスタートアップであり、国の威信もかかっているという意味で、私たちティアフォーは勝たなければいけない宿命にあると考えます。最先端技術を開発するだけではなく、大学の立場においては、法規制や倫理に関する課題提案も責任のひとつだと思っています。

ー 加藤様ご自身は、どのような研究者・開発者でありたいですか

 常に成功をイメージして進めることを大切にしています。また、事業性にフォーカスするのではなく、掲げているビジョンやミッションに基づいて判断することを常に意識しています。たとえば、ティアフォーは「創造と破壊」をミッションに掲げています。そのミッションに反する事業でなければ、自動運転だけに縛られる必要はないと考えています。

ー ティアフォーに関心がある学生へメッセージをお願いいたします

 自動運転の社会での実用化を目指していますが、それだけではなく、ティアフォーが持っているテクノロジーを全てオープン化して、さまざまな組織や個人が、テクノロジーの発展に貢献できるエコシステムの構築を目指しています。それが世界で大きなインパクトを与える方法だと考えているからです。一緒に世界を目指しましょう。

プロフィール(インタビュー当時)

加藤  真平 氏

株式会社ティアフォー創業者兼CTO。東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻科准教授。1982年神奈川県生まれ。2008年慶應義塾大学理工学研究科開放環境科学専攻博士後期課程修了。2015年株式会社ティアフォー創業。2018年国際業界団体The Autoware Foundationを設立、理事長に就任。専門はオペレーティングシステム、組込みリアルタイムシステム、並列分散システム。

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