博士・ポスドク 仮面座談会 Vol.2

インタビュー

前回の続きとして、第二回は大学院生にとって切実な「お金」の話をお届けします!

数学さん 数学系専攻 博士課程

医学さん 医学系専攻 博士課程

芸術さん 芸術学系専攻 博士課程

環境さん 環境系専攻 博士課程

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お金の話

医学さん:経済面は確かに大きいですね。私はTAはやっていますが、お小遣い程度しか収入源がないから…それも覚悟した上で進学をしていました。皆さんはどうしているんですか?

芸術さん:博士に入る前に親がすでに退職していて、生前贈与としてある程度まとまったお金をもらっていたのでそれで学費を賄いました。修士と非常勤講師の時は沖縄にいたんですが、お金をもらった時に思ったのは、これなら学費が出せる!博士に進学しよう!みたいな(笑)ただ、うちの大学はTAとかのサポートはまったくないので、生活費は普通のアルバイトとか日本学生支援機構の奨学金でカバーしていますね。今はコールセンターで事故の受付のアルバイトをしています。

数学さん:てっきり音楽系のアルバイトをしているのかと思ってました。ピアノの先生とか。そういったアルバイトはしないんですか?

芸術さん:正直言って、音楽に関するアルバイトはやりたくなかったんですよ。修士の時にやっていて、博士でもいくつかお話はいただいていたんですが、あらためて音楽の世界に戻ってやり直した時に、これしかできないのに人に偉そうなことを言ってお金を取っていたのかと思ってしまったんです。

環境さん:去年までは研究費があったんですが、これは研究のために使うお金なので勉強会とか研究者同士の飲み会に行きまくっていました。当然貯金はゼロ。そんな中でいきなり進路変更して学生期間を延ばすことにしたもんだから、今はすごく大変ですね。色々なアルバイトをしましたが、荒療治ではスナックやりました!

一同:えー???

環境さん:いやー、ホント色々な人間を見ましたよ(笑)色々あって辞めましたが、面白かったですね。何ていうのかな、どうせなら思い切ったことをやってみたかったんですよね。

芸術さん:その気持ちはちょっとわかるなぁ。今はやってないけど、何か極端なことがしてみたくて短期の日雇い派遣をやってみたことがあるんです。工場の夜勤として働いていたんですが、場所がかなり不便なところにあったから、夜の18時に家を出て翌日の昼11時に帰ってくる生活で…一日2時間くらいしか寝られないんですよ。これを1週間ぐらい続けました。

環境さん:しんどいなー!倒れちゃうよ。

芸術さん:いや、人間やればなんとかなるもんですよ(笑)何て言えばいいのかな、その時は何か世の中の役に立つ実感を得られることをやってみたかったんです。これは自分の意識の問題ということもありますが、文系の研究というのは、たとえ何か発見したとしても医学の研究ように治療法が確立されるとかではなく、成したところで世の中の役に立つというわけではないんですよね。確かに研究自体は素晴らしいとは思うんですが、そのために自分のお金と時間を費やして何の意味があるのか?と。図書館に行ってふと外を見ると、シルバーの方たちが草木の剪定とかゴミ拾いをしているのが見えて…彼らの方がよっぽど世の中の役に立っているなと思いながら学校に行ってました。

環境さん:ストイックですねー。私は今、いくつかやってるんですが、ひとつは隣の研究室の実験補助ですね。それから先輩が起業したベンチャーでインターンとして記事を書いたり、web調査なんかをしました。これは自分の進路を考えるのにすごく良かったなって思います。あとはとにかく美味しい海の幸が食べたい!ということでオイスターバーでのアルバイト、これは完全に賄い狙いです!1粒1000円の牡蠣が200円で食べられるんですよ(笑)

数学さん:私も一時期アルバイトを掛け持ちしていた時がありましたけど、そんなおいしい思いをしたことはなかったなー。修士1年の時、朝6時から宅配便の仕分け、夜はアパレル店員というのを2週間ぐらい続けていたんです。でも、留学生だから定まった労働時間を超えてはいけないという制限があって(編集注:留学生のアルバイトは一週28時間以内という上限があります)、宅配便を辞めました。あとはTAと個別指導塾の講師と、靴修理を掛け持ちしたこともあります。

芸術さん:え?靴の修理ができるんですか???

数学さん:いえ、修理というよりクリーニングですね。磨くとか。

環境さん:1日すごい数の靴がくるんですか?

数学さん:それがそうでもなくて、立地が悪くてお客さんが1人も来ない日もありました(笑)それで経営が悪くなって、本部直営になることになったんですが、それにあわせてパートの人たちが解雇されちゃって…半年働いたんですが、それで終わっちゃいました。

環境さん:みんな苦労してるんですねー。確かにそういうのもいい経験にはなるけど、博士が研究したかったら貧乏に耐えろ!っていうのはなんかおかしくない?私の周りには無給ポスドクが結構いる。逆境に負けずに頑張っている俺スゲーみたいに、あたかも美談のように考えている人もいるけど…それってどうよ?と思うな。アカデミーでも博士を体の良い労働力として考えているところがあって、それを前提としたサイクルになっているんじゃないかなーと。

医学さん:お金といえば、近いうちに科研費とかのあり方も変わってくるんじゃないかな?今はみんなから集めた税金を使って研究をやっているけど、科研費の不正受給とか不正論文とか、最近は世間からのアカデミックへの信用性も怪しくなっていると思う。そうするとお金を出す方も色々考えちゃうと思う。果たして科研費の割り振りが正しいのか?とか特定の分野に対して惰性で流れているんじゃないか?とか。

環境さん:そうだね。たぶんこれから先、研究者のあり方、研究費のあり方がかわってくるんじゃないかな?アメリカではクラウドファンディング(編集注:不特定多数の人がインターネットを通じて、組織や活動に対して財源の支援や協力を行う仕組み)が広まっているけど、日本にも定着するんじゃないかと思う。もう既にプラットフォームはできているから、多くの人に興味を持ってもらえるような研究は、こうした仕組みを活用してお金を集めてくることができるのでは?アカデミーでの評価が高ければ研究費に繋がるというような現状のシステムがこのままつづくわけではない。研究者一人ひとりがお金を取ってくるという意識というのかな、アピールが上手な人との人脈だったり、共感してくれる人だったり、昔であればパトロンでしょうか?研究のパートナーを作ることを意識しておくべきなのかなと。


第二回はここまでです。

次回をお楽しみに!

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