イベントレポート【アカリク Tech Talk Special】 デジタル時代のキャリアを考える~アカデミアとビジネスの現場からみる最前線~

インタビュー
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イベント概要

最前線で活躍するエンジニアの方をお招きし、最新技術の実情や、その技術を中心とするビジネスについてトークセッション形式で語っていただく【アカリク Tech Talk】。
その特別版として今回は「デジタル時代のキャリアを考える~アカデミアとビジネスの現場からみる最前線~」と題しアカデミアとビジネスそれぞれの現場で活躍する方に同時にご登壇いただき、それぞれの魅力や最先端の技術、さらにはこれからの時代に必要とされる人材像に関するトークセッションを行いました。

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本記事では当日のトーク内容の一部をレポート致します。

パネリスト

【スピーカー】
・仲谷 善雄 氏  学校法人立命館総長 立命館大学長 情報理工学部教授
・松原 仁 氏   東京大学次世代知能科学研究センター 教授
・渡辺 京介 氏  株式会社DONUTS SRE室長
【ファシリテーター】
・久松 剛 氏   株式会社LIG BiTT開発 マネージャー

1.「専門性と汎用性」

久松氏:

最初のテーマは「専門性と汎用性」です。博士の方々と対峙すると、専門性にこだわりすぎて、「専門性から少しでもずれたらダメだ」と思い込んでいる人が少なくないと感じます。

松原氏:

何かを博士まで続けたことも専門性も重要なのですが、そのままの考え方で企業でやっていけるわけではありません。僕も、学生時代のテーマができたのは入って一年目までで、2年目からは全く違うことをやっていました。大事なのは「何か専門的なことをやった」という経験です。就職してからも、何か新しいことを常に勉強して、テーマを変えていくことは、研究でもビジネスでも大切です。

仲谷氏:

私自身、専門はこれまで大きく3~4回変わりました。ある分野を5年もやれば、その分野の専門家になれますよ。そんなものです。どこかを深掘りした経験やその時の学び方がやはり大事だと思いますね。

渡辺氏:

開発においても一つのことを3年続ければ、早ければ一人前になれることもあります。結構ハードな働き方をしていたのですが、多分皆さんも大学に入る時は結構ブラックだったと思います。一日12時間勉強することがあったと思いますけども、あれに比べたら本当に楽ですよね。一度20代でハードに働いておくと、30歳超えてからがだいぶ楽だと思います。IT企業なので、例えば量子コンピュータを作っている人などではない限り、何らかのサービスをうまく使って作るので、継続的にうまく使える材料を探し続けるのが面白みでもあり大変なところでもあります。どのように継続して学習をするかが重要だと思います。

久松氏:

また、大学院まで行くと、就職活動の面接で、自分の研究内容を文系学部卒の人事の方に説明しなければいけない訳ですが、これをハードルと捉える方が多いです。「親戚の子供に話すように自分の研究テーマを噛み砕く練習」がとても重要だと思います。

松原氏:

企業でも、上司に対して「この仕事は大事なのでやらなければいけません」と説得する際に同じ能力が必要です。大抵の企業の上層部の方は、それこそジェネラルな人ですから、専門的なことがよく分からない。彼らをうまく説得する能力が、生涯に渡って大事です。それを学生のうちから、相手はお母さんでも恋人でもいいのですが、うまく説明する練習をすることを心掛けた方がいいと思います。

久松氏:

私も今エンジニア向け研修を作って提供していますが、その中で一番評判が良いコンテンツが、「非エンジニアの経営者に障害対応報告をする」という内容です。エンジニアは障害報告をする際も、時系列で何が起きたかを並べるのですが、経営者からすると抜本的な対応をするのにいくらかかるのか、どれだけの時間や費用がかかるのか、どれくらいの事業インパクトがあるのかが重要です。専門性の解説も同様で汎用的な形で話す訓練も必要だと思います。

2.「キャリア選択と情報」

久松氏:

次は「キャリア選択と情報」です。私の感覚では、就職活動を経験していない方が博士を修了して就職活動しようと思った際に、学部生以上に親バイアスに負けてしまったり、よく分からないキャリアを選択している人が多い印象があります。

松原氏:

僕も20年くらい大学の先生をしていますが、親バイアスは強いですね。親御さんは自分が知っている名前の会社は強いと思っていて、小さくても良い会社はたくさんあるのに「その会社は何をやっているの、大丈夫なの」と言います。キャリアを決めるときには当然やりたいことが第一ですよね。「ここでの決断が自分の人生を全て決める」ことはないので、勇気を振り絞ってやりたいことを最優先するのがいいと思います。

仲谷氏:

親の世代の認識は古いので、信用しては駄目ですよね。昔の枠組みしか頭の中に入っていないので、言うことを聞いていたら人生を間違えてしまいます。

久松氏:

今はキャリアに関する情報が溢れていて、情報に溺れている人たちも見かけます。その中で、どう情報を取捨選択していくのがいいのでしょうか。

仲谷氏:

僕は企画系のことをやりたいと思い、さまざまなところを受けていました。そんな中、指導教員から「仲谷君、研究に興味ある?」と言われて、研究は企画に似たものかなと思い、「興味あります」と答えました。そしたら、三菱電機が人を探していると言われまして。その、「興味ありますか」と訊かれてから「はい」と答える2秒間ぐらいで僕の人生が決まっているのです。その時は、企業の研究職は何をするものかも全く知らなかったのですが、面白そうだという感覚があって、それを信頼して行ってみたら面白かったのです。キャリア選択と情報の中で大切にしたいのは、「アンテナの張り方」です。いろいろと行動している中で、「これは自分にとって重要なチャンスなのではないか」という瞬間に巡り合う時がきっとあります。それを間違えずに捕らえるということではないかと思います。

渡辺氏:

皆さん、選択をすることにあまり慣れていないではないかと思っています。アンテナの張り方もやはり難しくて、最終的に決定する時には「意志が強い人ができる」と個人的に思っています。自分が納得いくまで調べても、必ずしも正しい選択にはならないこともあるので、常に駄目だった時の心の拠り所を残しつつ、さっさと決めちゃって実行に移した方が良いと思います。

松原氏:

例えば、今では研究室の共同研究は重要な機会ですね。共同研究すると実際に企業の研究者とやり取りして、雰囲気や人となり、話の進め方、お金の使い方などが分かります。特に、お金の使い方は大切です。入社してみたらケチで何にもやらせてくれない、なんてことはよくあります。お互いお見合いでうまく行けば、企業側からも「ここの大学院生と一緒にやってみて、いいと思った」というのは、時々聞きます。そういう意味でも、インターンは良い情報収集の場であると言えます。

3.「デジタル時代のキャリア戦略」

久松氏:

ここからは「デジタル時代のキャリア戦略」というテーマで、これまでの話を踏まえて、皆様から一言ずついただきたいと思います。

仲谷氏:

「DX×何とか」はいろいろな分野があって、新しいことが起きようとしています。そういう時代では、どんな専門であってもデジタルと絡めることで、いろいろな企業に転職できます。柔軟なキャリアプランを立てて、動きやすい時代になってきましたし、今後もっと動くようになると思います。

ですから、自分の専門がどうこうではなく、「何をしたいか」を中心に考えられる時代にようやくなってきたと思います。逆に、「あなたは何がしたいのか」ということが最も問われます。それを見つめてほしいです。

松原氏:

大学院生は専門性を伸ばすのをこれまで以上に進めて欲しい。そして専門性をベースにして、好奇心と共に広げていってほしいです。いろいろなことに興味を持って、自分のやっていることにも自信をもって、「今まで気がつかなかったけど、これにも適用できるんじゃないか」と、DXで新しい結び付きを思いついた人が、例えばベンチャー企業を作って大成功するわけです。対象を広げていく好奇心、どちらかと言うとそのような態度を身につけてほしいです。

渡辺氏:

音大卒のエンジニアなども結構いて、それこそ大学院というレベルよりも、もっとギャップがある世界になります。結構体育会系で、一つ領域をある程度マスターすると、次の領域もマスターが早くなる。勉強の仕方を学んでいるような形です。ですので、あまり心配しなくてもよいと思います。あまり「専門」と思い込んでしまうと、本当に逃げ道がなくなってしまうので。それこそ大学を出ていなくても何とかなりますし。

仲谷氏:

これまで学生さんをはじめとするさまざまな方々を見てきて、一つ思うことがあります。面白いキャリアを積んでる人や、楽しそうに働いてる人は、「これは自分に関係ない」と言いません。人生は「自分をどう広げていくか」が面白いと思うので、関係がないと思っても一度は聞いてみる、見てみる、調べてみる。そのような気持ちが大事ですね。戦略というより、構えから、ですね。

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