#データで見る 博士の企業就活

博士の日常

博士課程の学生は、学部や修士の学生よりも高い専門性を備え、年齢も重ねています。しかしながら、就活というフィールドでは初心者です。さらに、就活を取り巻く環境は厳しい現状です。新卒の研究開発者を採用する企業は、増加傾向にあり、その間口はひろがりつつあることも事実ですが、就職活動を成功させるためには、万全の準備と対策が必要です。

企業の視点

まずは、企業の視点に立ってみる事から始めてみましょう。自分をPRする上で、事前に相手のニーズを知る事は重要なプロセスです。企業はなぜ研究開発をするのか?という切り口から、その理由を見てみましょう。下のグラフは、2019年の調査(科学技術・学術政策研究所『民間企業の研究活動に関する調査報告2019』)から、割合の多いものを抜粋して、順序化したものです。

takaya06-企業が研究開発を実施する理由

科学技術・学術政策研究所『民間企業の研究活動に関する調査報告2019』を参考にアカリク作成

「顧客ニーズに対応するため」(79.3%)の回答割合が最も大きく、「経営戦略上の目標を達 成するため」(72.6%)が続いています。このことから、企業の研究は、経営・営業上のニーズに直接的に基づいて実施されている事が分かります。研究の成果は、企業経営に直結する、重要な産物となるのです。

takaya06-企業の研究開発費の比率

科学技術・学術政策研究所『民間企業の研究活動に関する調査報告2019』を参考にアカリク作成

研究のスパンでは、1~4年で実施する「短期的な研究開発」費の割合が、5~10年ないしそれ以上の「中長期的な研究開発」費よりはるかに大きく、3倍以上となっています。

企業のニーズや世の中の潮流が、めまぐるしく変化していく中で、短期的に成果を出すため、意思決定や研究のスピードが求められています。

求められるスキル

具体的に、企業の求める人材像とはどのようなものかを見ていきましょう。

takaya06-選考にあたって特に重視した点

日本経済団体連合会『2018 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果』を参考にアカリク作成

ご存知だと思いますが、「コミュニケーション能力」は、多くの企業が重要視するスキルです。経団連の調査(日本経済団体連合会『2018 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果』)によると16年連続で1位を独走しています。続いて、「主体性」が第2位(10年連続)、「チャレンジ精神」は3年連続で第3位となっています。これらの資質は、学部生や修士・博士を問わず、汎用性の高いスキルとして、重視されつづけています。企業という組織の中で活躍するためには、必須の能力であるといえるでしょう。博士は修士と比べると、「プレゼンテーション能力は高いが、物事を平易な言葉で伝える力に問題のある場合がある」との企業の意見があります。博士に関しては、社会における自身の研究の意義や位置付け、研究内容のオリジナリティや新規性について自分の言葉で分かりやすく説明できるかどうか等からも、コミュニケーション能力を判断されるようです。

この先は、文科省による企業へのインタビュー(篠田・鐘ヶ江・岡本
2014)から、企業が博士人材に求めている能力を、いくつかまとめていきます。

■「柔軟性」

企業の研究分野は、社会の状況や顧客のニーズに応じて絶えず変化するため、自身の専門分野に固執せず、関連分野への幅広い知識や興味が期待されており、変化に臨機応変に対処できる柔軟性が求められます。

■「独自の発想力」

イノベーションの創出には答えがないため、ゼロから何かを生み出すことのできる発想力と行動力が重視さます。博士人材は企業にとって未だマイノリティであり、社内に新しい風を吹き込む ための異質な人材として、また、これまでに他の社員が保持していないリソース・ネットワー クや、新しいアイディアの提供者としての価値が見出されています。

■「巻き込む力」

新しい製品やサービスの創出は1人で成し遂げられるものではないため、周囲を巻き込みながら事業を推進できる素養が必要とされます。

■「研究に取り組む姿勢」

博士課程における研究業績そのものではなく、研究に取組む際の姿勢や方法論、研究プロジェクトにおける本人のコミットメントの度合いが重視されている傾向があるようです。

大学院生はその時間の大半を研究活動に費やしているので、専門性や研究テーマが自身の能力だと考える傾向が強いですが、実際に専門性として見えているのは能力のごく一部であり、専門性を支える基礎も含めた全体が能力なのです。

画像6

アカリクWEB『就職活動ガイド:大学院生・若手研究者の能力と就職活動』より

専門性を支えるこれらの能力は、ビジネスにおいても大いに役に立つ可能性を秘めています。しかし、学生自身は研究活動を進める中で、意識せずに習得しているケースが多く、その客観的な価値に自身が気づいていないという場合も多いです。自身の能力を、俯瞰的に認識して、発信することが、就職活動においては大切なのです。

就活情報収集

初めに思いつくのは、ローカルなネットワークを利用することかもしれません。研究室のメンバーやOB・OG、教授などからの情報を活用することは、自身の研究分野を活かせる企業と出会うための、身近な手段です。

また、インターンシップや、共同研究などの場に参加することも有効な手段の一つです。実践的な学びの場では、アカデミアの教育プログラムではなかなか得ることのできない、貴重な体験を提供してくれ、自身の成長につながると共に、就活・就職後の業務や研究においても大きな財産となるでしょう。自分の行きたい企業について深く考えるという面でも、いい機会になります。

一方で、ポータルサイトなどのオンラインサービスを利用した情報収集も大切です。弊社が運用する「アカリクWEB」をはじめとして、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営している「JREC-IN Portal」など、博士を対象とした就活情報サイトを有効活用することは、ローカルの情報網と比べ、選択肢が劇的に広がります。情報収集元は一つに固執せず、様々なツールを試してみましょう。

まとめ

■企業の視点に立つことから初めてみる。
■自身の能力を、専門的な部分だけでなく総合的に把握しよう。
■情報収集は、ひとつのやり方に固執せず、複数の手段を併用しよう。

[文責・高谷翔太]

参考文献

■アカリクWEB『就職活動ガイド:大学院生・若手研究者の能力と就職活動
■科学技術・学術政策研究所『民間企業の研究活動に関する調査報告2019
■日本経済団体連合会『2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果
■篠田裕美・鐘ヶ江靖史・岡本拓也 (2014)『民間企業における博士の採用と活用 』文部科学省 科学技術・学術政策研究所

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