MLエンジニアになるには?仕事内容・年収・必要スキルとともに解説

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「MLエンジニアとはどんな職業?」「どうやったらなれるのだろうか」これから就職活動を控えている大学生・大学院生の方は、こんな疑問を持つこともあると思います。MLエンジニアは今ニーズが高まっていて、良い待遇も見込める人気の職業です。

今回はそんなMLエンジニアはどんな仕事をするのか、他のエンジニアとの違いや、なるために必要なスキルなどを解説します。MLエンジニアに興味がある人はぜひ参考にしてください。

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MLエンジニア(機械学習エンジニア)とは

MLエンジニアの”ML”はMachine Learning(マシーン・ラーニング)のことで、日本語にすると「機械学習」を指します。ここからはMLエンジニアが担っている役割や、似た職種との違い、平均的な年収などについて見てみましょう。

機械学習とは

機械学習とはAI(人工知能)の技術の1つであり、機械に学習をさせることで、人間が指示せずとも自動で判断ができるようになったり、特定の人物や物を認知することが可能になります。

そもそもAIは、機械学習やディープラーニングなど複数の技術を含む広い意味の言葉なので、厳密にAIと機械学習は同じ意味ではありません。機械学習は以下の3つに分類されます。

  • 教師あり学習
  • 教師なし学習
  • 強化学習

「教師あり学習」は入力データと出力データを機械が学習してパターンを覚えていくものです。「教師なし学習」は元のデータがなく、情報を読み解くなかで分類や新しいパターンを見つけるために用いられます。

そして「強化学習」は「教師あり」学習の特性を強くしたもので、正解した際の点数に重みづけをすることにより、機械の学習能力を高められる手法です。

MLエンジニアの役割

AIが機械学習をするためには、学習するためのデータが必要です。MLエンジニアは機械に読み込ませるデータを作成したり、アルゴリズムを調整したりするのが主な仕事です。作成したデータを機械に読み込ませて結果を見ながら、精度を高めるために仕様を変更していくのです。

機械学習の一つに「ディープラーニング」という、人間の神経回路をイメージして作られたアルゴリズムがあります。MLエンジニアはこうした高度な技術を活用しながら、さまざまな業界で活躍している職業です。

MLエンジニアとデータサイエンティストの違い

MLエンジニアとよく似た職種に「データサイエンティスト」というものがあります。データサイエンティストは定義が広いのですが、あえてMLエンジニアと区別すると、機械学習によってアルゴリズムを作成するのがMLエンジニアで、そのアルゴリズムを利用したり、必要なアルゴリズムを提案するためのデータ分析を行うのがデータサイエンティストといわれています。

アルゴリズムが出力したデータの結果を分析し、ビジネスにおけるPDCAをまわすことがデータサイエンティストの主な役割なので、MLエンジニアが開発したアルゴリズムのユーザーという立場とも捉えられます。どちらも機械学習の分野には不可欠なポジションであり、AIを活用するために必要な役割を果たしています。

MLエンジニアの年収

MLエンジニアの年収は600万円~1200万円台といわれています。エンジニア全体では500万円ほどといわれているので、エンジニアの中でも特に待遇がいい職業といえるでしょう。さらにMLエンジニアは海外でも需要が高いというデータもあります。

AIに関するデジタル領域はこれから伸びていきますので、スキルが高ければ年収1,000万円台も目指すことも可能です。年収の高さを重視している人にとっては、挑戦しがいがある職種ともいえます。

MLエンジニアの将来性

MLエンジニアの将来性は、AIをはじめとしたデジタル領域が急速に伸びているように,、今後も需要が高まると考えられます。しかし一方で「MLエンジニアの仕事はなくなる可能性がある」ともいわれています。

たしかにAIの進歩が進み、人の手を使わずに機械学習システムが作れるようになれば、MLエンジニアは不要になるかもしれません。しかしその段階まで行くためには、AIや機械学習の進歩を待つ必要があります。

したがって、MLエンジニアの仕事はAIに置き換わる可能性があるといえども、近い将来にそれが起こるとは考えにくいでしょう。経産省が発表している「DXレポート」でも、デジタル領域に長けている人材は今後不足していくと予想されています。

このようにMLエンジニアの将来性は明るく、今からでもMLエンジニアを目指すことは十分可能です。ただ、日進月歩で技術が進んでいることから、常に最新の動向を把握しつつスキルを身につけていく必要があります。

MLエンジニアの仕事内容

MLエンジニアの仕事内容は機械学習のアルゴリズム設計や検証、システムの開発や運用保守などが主な業務です。それぞれ具体的に見てみましょう。

機械学習のアルゴリズムの設計及び検証

1つ目の仕事は機械学習のアルゴリズムの設計及び検証です。機械がデータを学習するために必要なプログラムを作り、実際に読み込ませて結果を見ることで求められる結果が出るのかどうかを確かめます。

たとえば機械に「この人物は男性」とわかるデータを複数読み込ませたいときに、いくつも男性の写真やイラストを用意してアルゴリズムに組み込むのがMLエンジニアの仕事です。

そして学習が終わったあとは、さまざまな人物の画像を入力し、正答率がどのくらいになるかを検証します。こうして機械学習の最初に必要なアルゴリズムを作り、精度検証を行うこともMLエンジニアが行います。

機械学習を用いたシステムの構築及び開発

MLエンジニアはアルゴリズムの設計・検証だけでなくシステム開発にも従事します。たとえば先ほどの「人物が男性かどうか判断する」というアルゴリズムを、実際に使われている監視カメラの録画データに適用できるように機能を追加していくのです。

スーパーの監視カメラの裏側にあるシステムに先ほどのアルゴリズムを組み込むことで、来店する客層が男性が多いのか女性が多いのか、といったことを分析できるようになります。

さらにアルゴリズムを改良することで年齢層や、一緒に来店する人が家族なのか、友人なのかなども分類できるようになり、市場分析などに活用することも可能です。

機械学習を用いたシステムの保守及び運用

機械学習のシステムを開発したら、その後の保守や運用もMLエンジニアが行います。機能に不具合があれば修正するなどして、成果が持続するような対応を実施します。

先ほどの例であれば、カメラを用いた性別や年齢層の判別機能がうまく作動しているかをチェックします。もし間違って情報を認識している部分があれば、その原因を見つけて改善するのもMLエンジニアの役割です。

これらの一連の業務は統計学など専門的な知識も必要になるため、MLエンジニアとして機械学習を扱うためには膨大な学習が欠かせません。

MLエンジニアで必要となるスキル

MLエンジニアとして活躍するためには以下のスキルが必要です。

  • プログラミングスキル
  • 数学・統計の知識
  • データ分析及び統計解析の経験
  • データベースの運用知識
  • 機械学習に関する知識
  • クラウドに関する知識

それぞれの内容について詳しく解説します。

プログラミングスキル

MLエンジニアとしてアルゴリズムやシステムを設計・開発するためにはプログラミングスキルの習得は欠かせません。具体的にはPythonを使うことが多く、この他にC++やJavaの知識もあるといいでしょう。

Python自体はプログラミング言語の中でもそこまで難易度は高くないので、初心者でも比較的学びやすいといわれています。既に大学院でプログラミングを習得しているなら、新しい言語の習得もスムーズに行えるでしょう。

数学・統計の知識

機械学習には数学や統計の知識も必要です。具体的には高校・大学で学ぶような微分積分、確率、ベクトルなどが該当します。機械学習のアルゴリズムを設計するためにはこれらの知識が必要であり、仕事をする際に先輩に一から教えてもらうことは難しいのが現状です。

仮に数学や統計の知識が不足しているなら、独学してある程度理解したうえでMLエンジニアの職種に応募する必要があるでしょう。

データ分析及び統計解析の経験

MLエンジニアになるにはデータ分析、統計解析のスキルを持っておく必要があります。機械学習では膨大なデータを扱うことになりますが、それらを正しく集めて分析することで、新たなパターンやデータの規則性を見つけられます。

統計学の理論にもとづいて、大量のデータを解析することで仮説を検証し、新たな傾向を導き出すこともMLエンジニアにとって必要なスキルの一つです。

データベースの運用知識

MLエンジニアとして仕事をするためには、データベースの知識も必要です。データベースとは、整理して取り出しやすくした情報のことを指します。機械学習にもとづいて収集したデータを他者が見たときに理解して、必要な情報を検索できるようにきれいにまとめることが必要になります。

具体的にはSQLなどのプログラミング言語を習得しておくことが理想で、膨大なデータの中から適切な情報を取り出せるようにしておくことが大切です。

機械学習に関する知識

機械学習の知識もMLエンジニアの仕事をこなすために大切なスキルの一つです。先ほど述べた「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」など、それぞれにどのようなアルゴリズムが適用されるのか、あらかじめ勉強しておく必要があります。

またシステムを設計するためのフレームワークやプログラミング言語など、機械学習では学なければいけないことが多岐に渡ります。業務をこなしながら学べばいいこともありますが、基礎学習は早いうちに終えておくことが理想です。

クラウドに関する知識

MLエンジニアは開発したアルゴリズムやシステムをクラウド上に展開することが多いため、クラウドに関する知識も必要です。AWSやMicrosoft Azureなど、主要なクラウドサービスの構築方法はしっかり学んでおいた方が良いでしょう。

MLエンジニアになるには

MLエンジニアになるためには大学や大学院などでスキルを付けてから新卒採用を狙う、プログラミングスクールで技術を学ぶ、システムエンジニアからステップアップするなどの方法があります。MLエンジニアになるための方法について見ていきましょう。

未経験でもMLエンジニアになれるのか

機械学習の分野は高度な知識が問われるので、まったくの未経験からMLエンジニアになるのはハードルが高いです。しかし、ある程度知識を身につけて一定の条件を満たせばMLエンジニアのポジションに就けるようになります

未経験からMLエンジニアになるためには、以下に記載する方法でステップアップしてスキルを身につけていくといいでしょう。

  • 大学・大学院でスキルをつけて新卒として採用される
  • プログラミングスクールでスキルを習得する
  • システムエンジニアからステップアップする

大学及び大学院で学んだあと、新卒採用を狙う

1つ目は大学や大学院で機械学習、プログラミング、統計学などの知識をつけてから企業の新卒採用枠を狙うことです。特にデータ工学や情報科学系の学部では、MLエンジニアになるために必要なスキルを身につけやすく、企業からも評価されやすい傾向にあります。

他の分野を専攻していても、その分野の知識をアピールできれば新卒枠で内定をもらえる可能性は高まります。機械学習に役立つ講義を積極的に受講して実力をつけましょう。

プログラミングスクールで技術を身につける

2つ目の選択肢は、プログラミングスクールに通って機械学習の技術を身につけることです。スクールに通うとその分授業料はかかってしまいますが、教材やスケジュールが一通りそろっているので独学するよりも効率よくスキルを習得できます。

またスクールによっては、卒業後のエンジニア転職をサポートしてくれるところもあります。エンジニアを採用している企業とのパイプがつながっているので、希望の職種につきやすいことも大きなメリットです。

システムエンジニアからのステップアップ

MLエンジニアは高度な技術を要するため、最初から望むポジションにつけるとは限りません。そのため、最初はシステムエンジニアになり、後にMLエンジニアに転向するのも一つの手段です。

さらに、システムエンジニアの業務で行うプログラミングやシステム開発の経験は、MLエンジニアになっても活かせます。最初からMLエンジニアになるよりも、システムエンジニアからステップアップするほうがスムーズに仕事をできるようになる可能性が高いです。

まとめ

MLエンジニアの仕事に必要なスキル、具体的なステップアップの手順などを紹介しました。記事で紹介した内容をまとめると以下の通りです。

  • MLエンジニアは機械学習を担当するエンジニア
  • 機械学習とは、AIなどの機械がデータから出力値を学習すること
  • MLエンジニアは機械学習のためのシステム実装や機械学習アルゴリズムの設計・改善、データ作成、データサイエンティストはアルゴリズムの活用を行う
  • MLエンジニアの平均年収は500万円~1200万円台
  • MLエンジニアの将来性は、AI領域が伸びていることに比例して需要が高いと考えられる
  • MLエンジニアの仕事内容はアルゴリズムの設計、システム開発や運用保守が中心
  • MLエンジニアになるためには数学、統計、プログラミング、データ解析、クラウドなど多岐にわたるスキルが必須
  • 未経験からMLエンジニアになるのは至難の業
  • 大学や大学院でスキルを付ける、プログラミングスクールに通う、システムエンジニアからステップアップするなどの方法がある

MLエンジニアになるには非常に高度な技術が必要ですが、各業界でニーズが高まっている人気の職種でもあります。まずは必要なスキルを身につけて、MLエンジニアになるための現実的なルートを見つけてみてください。

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アカリクリポーターズとは、大学院生としての経験や知識を「リポート」するライター集団です。全員大学院在籍経験があり、これまでの研究経験や知識を活かして、大学院生の皆様に役立つ情報をお届けしています。専門分野は工学・化学・生命科学・心理学・社会学等様々です。

【監修】アカリクお役立ちコンテンツ編集部
博士号所持者/博士課程在籍経験のある編集者が監修しています。

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